2019年9月11日水曜日

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 これからの情報モラル教育『ゲーム依存を考えてみた』
          兵庫県立大学准教授 竹内 和雄(月刊「生徒指導」8月号)
 WHO(世界保健機関)が「ゲーム障害」を正式に病気と認定しました。近い将来、オンラインゲームに夢中で生活に支障が出ている人の受診が可能になります。画期的なことですが、「どうしてゲームだけ?」「SNS依存は認定されなかったの?」等の質問もよく受けます。私は医学が専門ではないので断定的なことは書けませんが、あくまで私の私見として書いてみます。
 ≪いまの「ゲーム依存」は深刻≫
① 家からオンラインで
 忙しい子どもたちの生活スタイルにマッチしています。塾や習い事で忙しいので、子どもたちの多くは、自分の家から隙間時間にゲームにオンラインで参加します。
② 協力して取り組む
 4~5人で協力して課題に取り組みます。強い敵を倒したり、殺し合いの中で敵を倒して生き残ろうとします。しかも、ボイスチャットで話しながら、ワイワイ楽しく難しい課題をみんなで達成していきます。
③ 時間とお金をかけると強くなる
 ユーチューバーの「ゲーム実況」等で、最新情報を仕入れることができます。日々、新しい情報が共有されるので、時間をかけて研究すればするほど有利です。また、ゲームに何度も参加すると経験値が上がり、強くなります。さらに、課金すれば有利なアイテムが獲得でき、強くなれます。少し前までの課金はクレジットカード等が必要でしたが、いまはコンビニなどでプリペイトカードを簡単に購入できます。子どもたちは小遣いやバイト代をそこにつぎ込みます。つまり、時間とお金をかければ誰でも強くなれます。ここが非常に重要で、学校を休んででも強くなりたい子どもが独出します。うかうかしていると敵も情報や新たな武器を得て強くなるので,油断できません。
④ 強い人は尊敬される
 ゲームが強いことは、子どもたちの中ではステータスです。部活や勉強で賞賛を浴びるのは難しいですが、ゲームの場合、時間とお金である程度達成でき、「レベル」等で強さは一目瞭然です。さらに最近は、eスポーツと称した大会等も増え、その世界大会となると高額な賞金が出ます。わかりやすいステータスが用意されています。
≪保護者も応援≫
 私はゲームに夢中で不登校状態の複数の子どもに、長くかかわっています。保護者は「この子の将来はどうなるでしょうか」と深刻に悩んでいますが、ある保護者は、息子さんがゲーム大会で上位入賞(数十万円獲得)したことをきっかけに、「息子を応援することにしました」と言うようになりました。息子さんのゲーム仲間には、自分のプレーをユーチューブ等で配信(ゲーム実況)することで再生回数に応じて報酬を得て、経済的に自立している人もいるそうです。「ゲームで生計を立てられるなら、子どもの夢を応援してみようかと思います」とプロになる後押しをする側に回られました。「アジア大会で正式採用、将来的にはオリンピック種目?」「高校にeスポーツ部ができた」等の報道もされており、社会的に認められつつあると感じている保護者が多いのです。
≪私たちはどう考えれば?≫
 こういう事態に私たち教育関係者はどうとらえたら良いのでしょうか。現状では『ゲームを職業に』と手放しで推奨するのは時期尚早です。しかしだからと言って、こういう動きを全て否定するのも難しくなってきました。ゲームをスポーツとして認めて、プロを目指す「夢」を認めたとしても、昼夜逆転した不登校状態は認めるわけにはいきません。分けて考える必要があります。
 子どもたちには、まず、規則正しい生活、勉強した上で夢を見ることを推奨します。実際、私がかかわっているプロゲーマー志望の中学生は、3年以上不登校状態が続いていますが、最近ジム通いをはじめました。「成功しているゲーマーは、規則正しい生活をして、身体も鍛えている」と目を輝かせながら話し、学校復帰も視野に入れています。
 勤勉で研究熱心な日本人に、令和のゲームは適しているのかもしれません。だからこそ、私たち教育関係者は、立ち止まって考える必要がありそうです。
 





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