使ってみたい こんな日本語 「痛み入る」
日本語研究者/編集者 本郷 陽二
例えば目上の人が直々に挨拶に来てくれた、出迎えや見送りをしてくれた。あるいは、丁寧なもてなしをしてくれたなど、自分に行きすぎた対応をしてもらうことがあります。そんなとき、どのような言葉で気持ちを伝えますか。
つい恐縮して使ってしまうのが、「申し訳ない」や「すみません」という表現ですが、「いやいや、こんなにしていただいて、すみません」「お忙しいところ、申し訳ないです」と繰り返し言うと、謝罪の言葉とも受け取られるため、「本当は嫌だったのかな」などと、相手に気を遣わせてしまう場合もあります。
こうしたときには、「ありがとうございます」「嬉しいです」「とても助かります」という感謝や喜びの気持ちを素直に伝えた方が、印象がよいでしょう。
お礼だけでなく、恐縮している気持ちをどうしても伝えたい場合に便利なのが、「痛み入る」という言い回しです。
「わざわざのお越し、痛み入ります」
「こんなによくしていただいて、痛み入ります」
「身に余るお褒めの言葉、痛み入ります」のように使います。
相手の過分な好意に対し、ありがたさと申し訳なさを「痛み」という言葉で表現した、
また、「痛み入る」の類語に「かたじけない」があります。
こちらは、時代劇でよく耳にしますが、身に染みてありがたい、もったいない、おそれ多いという意味の表現です。
「ご親切、かたじけなく存じます」
ある程度年齢を重ねた人が、さらりと使えば知性を感じさせます。ただし、若い人が使うと慇懃無礼(いんぎんぶれい:表面上は丁寧だが、内心ではバカにしている)な印象を与えかねないので注意が必要です。
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小学校の先生の話は「諄(くど)い」とよく言われる。子どもたちにわかりやすく伝えようとすると、簡易な言葉を選び、繰り返したり、念を押したり、時には上から目線で言うときもあります。それに慣れていると、今度は大人を相手にしたときに、適切な言葉が出て来ないときがあります。気を付けなければなりません。
北見市自治連広報の正月号の表紙を飾りました。