2017年12月24日日曜日

花だより シャコサボテン SNSにはまる子どもたち 冬蜜柑


  SNSにはまる子どもたち
                   和洋女子大学教授 細井 啓子  
                      月刊「児童心理」11月号より
 2017年5月、英国王立公衆衛生協会のSNSに関する若者のメンタルヘルスの調査では、インスタは最も有害であり、心理的に大きな影響を与えているという結果が出た。これは世界的にも注目されている。
 日本でもSNS利用に関する調査結果が報告されており、とくにLINEについては既読疲れが指摘され、友人関係にも支障をきたし、深刻な問題になっている。また、返信がなかったり、遅れたことがきっかけで、いじめや犯罪に巻き込まれる事例も少なくない。
「うわ~ァ、カワイ~ィ」
 少女たちは一斉にスィーツを撮りはじめる。お互いに見せ合いながら談笑する。レストランやカフェなどでのこうした光景は老若男女、どの年齢でも見られるようになった。いつでもシャッターが切れるように、手にはしっかりスマホを持っている。その理由は「インスタ映え」ブームである。世界中から送られる写真の投稿量は半端ではない。これまでは写真を撮られることを嫌がったレストランもその店の人気のバロメーターとなり、信頼できる情報源の一つになっている。
 「他人からよい評価を受けたい」、「自分を認めてほしい」、そして、優越感コンプレックスから、半ば義務感で「インスタ映え」に奔走し、投稿する少女たちがいる。インスタアプリで簡単に投稿でき、小学生にも大人気である。
 グループでインスタが流行れば、「みんなで一緒に」投稿し、自分のナルシシズムを満たすことができる。みんなから注目されるために、加工アプリを使い、自分ではない別の世界を作り出すことができるが、本当の自分とのずれを知っているのは、自分自身である。加工した写真を投稿するたびに、より劣等感や孤独感に拍車がかかり、自己嫌悪に陥ることもある。注目された写真を投稿する人への嫉妬やいじめのターゲットになることもある。
 SNSはコミュニケーションツールであるばかりではなく、SNS疲れや依存症という大きな落とし穴がある。それでもなぜ子どもたちはSNSにはまるのだろうか。それは今までの自分とは違う別の自分を求め、自分を認めてくれる場を探し求めているのである。失敗を恐れる子どもたちは現実ではないSNSの世界に自らの夢を託しているのかもしれない。                          (牧野要約)

 

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