2018年1月30日火曜日

花だより ネコヤナギ あいさつで人を大切に


『あいさつで人を大切に』~挨拶をしない地域 宮城県気仙沼市のやり取り~  
女:あれー、こん早くにどごさ行ぐの~。
男:仕事すさ。商売で行ぐどこさ。
女:あ~、ほんと。あ、んで、行ってだいん(=いってらっしゃい)。
男:はい、まいどど~もね~。
女:はい~。
 このやり取りを見て、“あれ?”と思われた方がいるでしょう。「おはよう」の一言がありません。
 朝ならば「おはよう」という挨拶は欠かせない。日本人にとって朝の習慣であると思い込んでいますが、実はそうでもなく、東北や九州、沖縄では、お決まりのあいさつを交わさない地域が存在します。
 おそらく古い時代には、挨拶らしい挨拶がなかったのです。それが定型的な挨拶表現ができあがって、広めたのは、京都や大阪、そして、江戸・東京という文化の中心地であったにちがいないのですが、そうした挨拶習慣が日本の隅々まで行き渡っていないのです。
 被災地支援で気仙沼を訪れた関東の介護師が、避難所で「おはよう」と声をかけても地元の人は「おはよう」と返してくれない。「今日は早いね~。今来たの」といきなり本題に入ってきて驚いたというのです。
 挨拶はきわめて社交的な言語活動です。相手と良好な関係を築いたり、維持したりするために挨拶はあります。したがって、さまざまな立場の人々が共存し、見ず知らずの人たちが入り込む不安定な社会にこそ挨拶は必要となるのです。しかし、内輪のよく知った者同士が暮らす社会では、そもそも挨拶を交わす必要性は低いのです。挨拶は社会の複雑さを反映する指標であると言えます。定型的な「おはよう」という挨拶表現より、「どこへ行くか」、「早いな」、「出かけるのか」と言うのが礼儀という地域があると言うことを知るべき(この方が相手を思いやる気持ちが伝わる。)で、共通語の感覚で礼儀を欠くと評価してはいけないということです。
 北海道は、東京から離れていますが、よそ者の集まりなので、挨拶は欠かせない言語活動です。
     (「日本語の魅力」 東北大学方言研究センター教授 小林 隆より 要約:牧野)

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