時代に合わない校則の見直し
同志社大学政策学部・総合政策科学研究科教授 大島 佳代子
1 校則違反の指導にみる権利侵害
校則違反に対して行われている指導自体に、もともとの校則の合理性・必要性とは別個の権利侵害が生じていることが問題になる場合があります。例えば、子どもの髪型などで校則違反をしたときに、「髪を直してこないと教室に入れない」「修学旅行に連れて行かない」などと発言する先生がいるようですが、これは重篤な人権侵害です。
中には「校則に違反した生徒が悪い」という考えの先生もいるかもしれませんが、校則を守らない生徒に何をしてもよいわけではありません。犯罪を犯し有罪が確定した人に対して何をしてもよいわけではないことと同じです。
また、校則に合うように、先生が実力をもって指導することも人権保障の観点から問題です。もしも職員室で先生が生徒の髪を無理やり切れば、傷害罪に当たるおそれもあります。個人的には、校則そのものよりも、校則違反の指導が不公平にならないように定められた指導のためのルールや規準(明文化されていないものも含め)に問題があるように感じています。
昨年10月、髪の毛が生まれつき茶色にもかかわらず、先生から黒く染めるように強要された公立高校の女子生徒が裁判を起こし、話題になりました。このケースでは生徒の生来の身体的特徴を変えるよう強要されており、憲法13条で保障された自己決定権が侵害されたといえます。
このようなことが今後起こらないようにするためには、先生方には校則の合理性・必要性とは別に、校則違反に対する指導自体の合理性・必要性を改めて考えていただきたいと思います。
2 これからの校則はどうあるべきか
これからの時代の校則は、学校が子どもたちを管理するためのものではなく、そこに集まってくる全ての子どもたちにとって、よりよい学習環境をもたらすためのルールでなければならないのではないかと思います。少なくても、特定の校則によって窮屈な思いをしたり、学校に行くのが嫌になったりする子どもがいないよう注意しなくてはならないでしょう。
校則の見直しにあたっては、全校生徒が集まって多数決で決めなければいけないかというと、そんなことはありません。先生方で決めても、校長先生が決めてもいいと思います。校則の中には、多数決で決めることが適切でないものもあります。制服に関する校則を変えるのであれば、性的マイノリティの子どもたちに対する配慮も必要でしょう。
さらに、校則の見直しを定期的に行うことが望まれます。法律でも時代とともに合理性が失われることがあります。数年に一度は見直しをしていただければと思います。
明日は「紫陽花」
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