2018年6月2日土曜日

花だより ウツギ 最後の運動会


【 最後の運動会】
 運動会の1週間前、美幌の実家に行ったとき、もう高齢の母が「ヨシミツ、あんたの最後の運動会だから、見に行きたいね。」と言い出しました。初任のとき(生田原小学校)の運動会、本部席までやって来て、「うちの息子がお世話になっています。よろしくお願いします。」と頭を下げていたことを思い出しました。
 小学生の時は、「ヨシミツが、リレーの選手にでもなれば、お弁当作りも力が入るんだけどね…。」と言われ、「習字や絵で賞をもらうよりも運動で目立った方がいいんだ!」と思い、いろいろな運動をやりましたが、残念ながらスポーツ大会で賞をもらうことはありませんでした。
 母には前日「明日は、暑くなりそうだし、風も強くなる予報だから、無理しない方がいい。」と説得しました。
□恩師との再会 
 開会式の前でした。「牧野くん、あなたの最後の運動会を見に来たわよ。」と母と同じ年の中川洋子先生が会いに来てくれました。教え子の子どもが北小に通っていて、私が校長だということを知ったそうです。「あなたが退職なのだから、私も年をとるはずよね。牧野くんは、運動会や学芸会になると張り切ってやっていたわよね…。」当時の話をし始め、直立不動で聞きました。
□運動会は特別 
 学校行事の中でも親にとって運動会は特別です。学芸会は、自分の子の出番の時だけしか来ない保護者がほとんどですが、運動会は、開会式から閉会式まで一日楽しむ保護者ほとんどです。そして、関係のない他の子の競技にも声援を送ります。普段子どもの教育に関して母親任せのお父さんも、この時ばかりは早起きして、場所取りにやってきます。おじいちゃん、おばあちゃんも「運動会はいつなの?見に行くからね。」と楽しみにしているので、お母さんは、お昼のお弁当作りに精を出します。せっかく朝早く場所取りをしたんだから、競技にも参加したいと思うはずです。3年生の「来て、来て、お願い」では、PTA会長は、いつ呼ばれてもいいように腰を上げて待ち構えていました。
□運動会の種目は、勝敗がはっきり分かる単純な方がよい 
 徒競走、玉入れ、リレー、綱引き、大玉転がしなど、昔からある種目がほとんどです。単純で勝敗がハッキリ分かり、見ていて安心感があります。これはオリンピックの陸上競技に通じるものがあります。そして、勝敗に関係のない遊戯が途中に入ることは、プログラムの構成上とても大切なことです。心が和みます。
□みんなが見るからこそ、教師の腕の見せどころ 
 参観日、オープンスクール、学校開放と学校の取組を地域、保護者に伝えるものがありますが、その一番が運動会だと思うのです。
 5月末から6月にかけて開催される運動会は、4月から2ヶ月間での子どもの成長の様子や担任の指導の様子も分かります。ですから、学級づくりの当面の目標は運動会になります。
□集団行動
 整列、行進などの指導が体育の授業からなくなりましたが、運動会の練習で、集団規律とか集団行動を身に付けなければなりません。それが学校生活の基盤だからです。
 若いときは常に運動会の担当でした。美幌小学校では約800名の児童数でした。入場行進と開会式の指導は、喉を枯らしてやりました。そのとき先輩から言われた言葉が「開会式を見れば、その学校の教育力が分かる。」です。加えて「学級担任の指導力も分かるんだぞ!」と教えられました。体がふらふらして話を聞いていない子が、きちんと授業を受けているとは思えません。腹筋と背筋が強くないと正しい姿勢を保つことはできません。運動のできる子は、体つきを見れば分かります。運動のできる子は勉強もできます。集中力も違います。運動会の練習でいろいろなことが分かるのです。
□じいちゃんになって 
 孫の運動会は、これまでと全く違う感覚 毎年、運動会を経験し、他校の運動会を見てきましたが、孫の運動会は、教師目線とはまったく違います。母親にべったりひっついて甘えん坊だった孫が、小学校に入ってみんなと一緒にやっていけるのか?(普段は、孫一人しか見ていないので)とても心配なのです。児童席のテントの中の様子、開会式の整列の仕方、遊戯の踊り方、リボンのもらい方、スタートの姿勢、双眼鏡を覗き、全て他の子と比べて見ているのです。1等だろうが2等だろうが、それほど関係ありません。遊戯の曲が何であったかも覚えていません。一生懸命にやっている姿、それだけに感動するのです。

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