≪医師からの警告≫ スマホは現代のアヘンか?
歌舞伎町メンタルクリニック院長 倉本 英彦
親がインターネットゲームに興じるあまり、子どもをほったらかしにして、子どもが重大な事態を招いてしまう事故や事件が後を絶たない。
母親がスマホに夢中になり、子どもから目を離したときに、何かのはずみで子どもが大けがをしたり、誘拐されたりする危険はいつでもどこでもおこり得る。
子どもの「スマホ依存」をどうしたらいいかという議論ばかり目立つが、実は成人の「スマホ依存」はもっとやっかいである。その親もとやかく言わないし、夫は会社を辞めてしまったり、妻は家事や育児をしなくなり、家族はめちゃくちゃになる。スマホ世代の若い母親にみられる「スマホネグレクト」を見逃してはならない。
母親の「スマホネグレクト」の典型例は、スマホに夢中になっているときに子どもにぐずられ、無意識に怒鳴りつけてしまう、という行動である。スマホを一時も肌身離さず片手に持ち、家事や育児、あるいは友人とのLINEを忙しくこなす母親。もう一方の手で子どもをだっこしながらも目は食い入るようにスマホの画面を見つめている。見つめるべき対象はわが子の目でしょうに。「母親よ、いったんスマホから目を離せ!」と叫びたくなるのは筆者だけであるまい。
母親が子どもの呼びかけに長期間反応しなくなると、子どもは泣いたり、ぐずったりしなくなり、しだいに笑わない、しゃべらない、無表情な子になり、孤立を好み、人間関係を築けなくなる。「母性愛の剥奪」あるいは「愛着障害」と呼ばれる状態になる可能性がある。
乳児の母親への愛着は、吸うこと、しがみつくこと、後を追うこと、泣くこと、微笑むことなどの感覚・運動を通じて形成されると言われている。そのどれもがスマホが提供する視聴覚のみの刺激とは対極をなしていることに「スマホ依存」の末恐ろしさを感じのである。
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