平成の教育・令和の教育 菱村 幸彦(国立教育政策研究所名誉所員)
平成の教育は「新しい教育観」でスタートした。しかし、これは文科省が言い出した言葉ではない。専門家会議で「新しい学習指導要領が目指す学力観に立った教育の実践に役立つ評価」という方針を掲げた。この方針について評価の専門家が「新しい学力観」と称してさまざまに理論づけしたことから、キーワードとして広まった。「新しい学力観」は、ブームが終われば「古い学力観」になる。
平成10年の改訂
学校5日制の完全実施に対応して、授業時数の削減と指導内容の削減が図られた。このとき「ゆとり教育」をキャッチワードに学力低下批判が「炎上」した。
「分数のできない」大学生が増えていることを指摘されると、その原因が「ゆとり教育」にあると批判した。さらに平成15年と18年のPISAで日本の成績が連続して下がり「ゆとり教育」批判に油を注いだ。
平成20年の改訂
「ゆとり教育」批判に応える形で学習指導要領の改訂が行われた。このときのキーワードは「確かな学力」である。
学校教育法が改訂され、学力の定義として、①基礎的な知識・技能 ②思考力・判断力・表現力等の能力 ③主体的に学習に取り組む態度の3要素である。
学力の定義を法律で定めるとは、思い切ったことをしたと驚いた。
平成の教育を一言で総括すれば「自分の頭で考える力」を重視した教育だった。
平成が終わり令和となった(平成29年と30年の改訂)
キーワードは、「主体的・対話的で深い学び」やカリキュラム・マネジメントが流行っているが、重要なのは「これから育成すべき資質・能力」として、①知識・技能の習得、②思考力・判断力・表現力等の育成、③学びに向かう力・人間性等の涵養を揚げている。これは過去との断絶ではなく、昭和の時代、平成の時代から積み上げてきたものである。
平成と令和の時代を一貫して変わらないキーワードは「生きる力」である。「生きる力」は、①確かな学力、②豊かな人間性 ③健康・体力をバランスよく育むことである。知・徳・体は古今に通じる教育の不易である。(牧野要約)
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