「学校は苦しくても行かなければならない」という固定観念
フリースクールなど学校以外の学びの重要性を認めた「教育機会確保法」の成立から間もなく4年になります。しかし、その中身が理解されているとは言い難い。基本方針で「登校のみを目標にするのではない」と示され、休養の必要性も明記されている。「不登校だと、大人になったときに社会の中でやっていけるのか」と心配する声もあるが、フリースクールの多くの卒業生は進学し、自分の好きなことに取り組んでいる。保護者は、その子にしかない価値を認めてあげ、生きる楽しさを子どもが感じられるように寄り添ってほしい。
人間らしく生きるための生活基盤の喪失
「叩くのは嫌いだ」「蹴るのも本当は嫌いだ。だけどやっちゃう。止められない。僕が僕を止められない。」
これは日常的に暴力行為を繰り返す男子児童が教師に泣きながら語った言葉である。教師はここで初めて、この児童が、父親による母親への家庭内暴力によって心を傷付けられてきただけでなく、離婚後も元気がない姿に悩み苦しんでいることを知ったと報告している。また、荒れる子どもたちの多くが両親の離婚や別居、家族のリストラなど家族の問題を抱えており、子どもの問題に経済的、社会的なことが絡んでいることを実感している。
このような問題は、子どもたちの問題行動だけでなく、彼らの成長・発達に深刻な影響を及ぼしていることが明らかにされてきている。
このような状況の中で、子どもたちは、多種多様な他者からの十分な存在承認を受ける機会を奪われ、乳幼児期の恒常的不信・自尊剥奪という傷つき、学童期の他者からの阻害や孤立・能力剥奪という傷つき、青年期の社会的排除と無力感という傷つきがケアされないまま、重層的に重なった状態に置かれている。
子どもたちは、自分が今置かれていること、自分が今生きていること、これから生きていくことを支えてくれる関係や社会的な支援の不足の中で、自分が幸せに生きることへの希望を奪われ、さまざまな傷付きを抱え込まされている。そして、それらを行動化されたヘルプとして我々に訴えているのです。 (フリースクール 理事長 奥野圭子)
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