2023年3月12日日曜日

花だより あれから12年 佳話を語り継ぐ スイセン

 

 東日本大震災 あれから12年 語り継がなければならないこと
~当時の新聞記事から~ 
 震災後間もなく一人のベトナム人記者が取材で被災地に入り、避難所である少年にインタビューしました。少年は津波で両親を亡くし、はげしい寒さと飢えで震えていました。一つのおにぎりを家族で分けて食べるような状況でした。
 記者は見かねて少年に自分のジャンパーを着せました。その時、ポケットから1本のバナナがぽろっとこぼれ落ちたのです。記者が、「バナナほしいか」と問うと、うなずくので手渡しました。ところが少年はそれを食べるのではなく、避難所の片隅に設けられたみんなで共有する食料置き場に持って行き、もとの場所に戻ってきたのです。
 記者はいたく感動しました。帰国すると、〈こういう子どもはベトナムにはいない……〉と報道したのです。
 この記事は大きな反響を呼びました。かつて、ドラマ「おしん」が大人気になったお国柄です。ベトナムからの義援金は、1千万ドル(約8千万円)に上りましたが、このうち「バナナの少年にあげてください」という条件付きが5万ドルもあったというのです。
 この佳話、谷内正太郎元外務次官が〈「東日本大震災の最中、日本外交を考える」〉と題して講演した中で紹介されたものです。谷内氏はこの時、「少年は大変けなげな日本人の美質、DNAをきちんと受け継いでいる。将来の日本を支える若い人たちの中には、こういう子どもは少なくない。上に立つ政治家も心の中に美学を持ってほしい」と訴えています。
(*回転すしで悪ふざけをする若者ばかりではない)
 この話を紹介した岩見隆夫氏(毎日新聞客員 編集委員)は、「悲劇と苦難のもとでも失われない民族的な強靱さを、一少年の小さな行為から教えられた思いだ」「今の日本は一見、いい材料がない。悲観主義が広がり、亡国論がはびこっている。この物語は大きな救いだ。あきらめることはない」と結んでいます。
 大震災の記憶を風化させないために悲惨な出来事を子どもたちに伝えることも大切だと思いますが、こうした心温まる話をたくさん子どもたちに語っていかなければなりません。
 自分は、つい最近の出来事と思っていますが、小学生は知らないのです。
   

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