2017年9月12日火曜日

花だより ツリフネソウ 植松 努の遠望・眺望


【平成24年度 北見市立北小学校 学校だよりから】
 ~植松 努の遠望・眺望~ 読売新聞(8月29日)
 学力テストの記事の隣にあったコラムです。
 知の資本 読書で蓄える 祖母の教え (植松電機専務として電磁石を製造する傍ら、北海道大学と共同で小型ロケットの開発に当たる。芦別市出身。47歳)
 植松電機はリサイクル用のマグネットを開発したことで成長を遂げました。私がこの新しい製品を開発することができたのは、祖母のおかげです。
 祖母の実家は樺太で技術職の仕事をしていました。祖母は頑張って働いてお金を貯め、豊かな暮らしをしていたそうですが、樺太は1945年の8月、旧ソ連軍に占領され、祖母は北海道へ戻ることになりました。船に乗る時にはお金や貴重品は持ち込めないことになっていたそうですが、祖母は「子どもたちのために」とお金を隠し持ち、いつ沈められるかもしれない不安な船内で「このお金で北海道に着いたら、おいしいリンゴを箱いっぱい買って食べようね。」と子どもたちを励ましたそうです。
 ところが北海道に着いてリンゴを求めると、リンゴは1個しか買えません。終戦後の猛烈なインフレで貨幣価値が変わってしまったのです。苦労して働いて貯めて、命がけで隠し持ってきた頼みの綱のお金は、価値を失ったのです。そうした経験を持つ祖母は、私に何度も諭しました。
 「お金は価値が変わるからくだらないよ。お金があったら、貯金しないで本を買いなさい。知識は誰にも奪われない。知識は新しいことを生み出すから」
 祖母の影響を受け、本が大好きになりました。部屋にはたくさんの本があります。本は先人たちの命がけの努力の結果を、わずかなお金で手にできます。
 人間は脳と肉体という資本を持って生まれてきます。重要なのは、その資本をいかに増やして伸ばすかです。もらった小遣いを飲んで食べて終わらせてしまうのか?せっかくの時間を「退屈だ、ヒマだ」と言ってだらだら費やすのか?私は本が大好きだったおかげで多くのことを学びました。祖母が教えてくれた「資本」は、誰でも継承できます。自分の能力を信じ、それを伸ばすための投資を惜しまなければ、きっと、人生はもっと豊かになると思います。

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