NHK連続テレビ小説「らんまん」が最終回を迎える。偉人と同じ姓というのは、誇らしいと思う反面、おこがましくもある。小学生の時に伝記を読んだくらいで、実は牧野博士の生き様、人となりは知らないでいた。
当時20代だった山本周五郎が「雑草」という言葉を口にしたところ、牧野富太郎博士はなじるような口調で次のようにたしなめた。
「きみ、世の中に〝雑草〟という草は無い。どんな草にだって、ちゃんと名前がついている。わたしは雑木林(ぞうきばやし)という言葉がキライだ。松、杉、楢(なら)、楓(かえで)、櫟(くぬぎ)——みんなそれぞれ固有名詞が付いている。それを世の多くのひとびとが〝雑草〟だの〝雑木林〟だのと無神経な呼び方をする。もしきみが、〝雑兵〟と呼ばれたら、いい気がするか。人間にはそれぞれ固有の姓名がちゃんとあるはず。ひとを呼ぶばあいには、正しくフルネームできちんと呼んであげるのが礼儀というものじゃないかね」
(木村久邇典『周五郎に生き方を学ぶ』実業之日本社より)
どんな植物にも固有の名前がある。それを無視して「雑草」「雑木林」などと人間にとって要不要だけで分類するのは、おこがましいという主張だ。
山本周五郎はこの言葉が胸に刻まれたようで「これにはおれも、一発ガクンとやられたような気がしたものだった。まったく博士の云われるとおりだと思うな」と振り返っている。
牧野富太郎は、現代においてSDGs(持続可能な開発目標)の先駆者だった。人間と自然環境がどう向き合っていくかを問いかけ、ひとつしかないこの地球で暮らし続けられる「持続可能な世界」を実現するために進むべき道を考えるという思想を、当時から持ち合わせていたといえる。
NHK連続テレビ小説は、史実には忠実ではないが、主人公の生き様から、いろいろなことを考えさせられる。視聴率が毎回高いのもうなずける。
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