2020年1月16日木曜日

花だより その子に合った言葉かけ カニサボテン

「その子に合った言葉かけ」
 「子供のために」と思って話したことが、相手に理解されず、糠に釘であったり無視されたり、時には反発されたりすることもあります。自分の言葉が相手の心に届き、自ら振り返ったり改善に努めてくれたりすると嬉しいのですが、なかなか上手くいかないことが多いものです。
 下のようなケースの場合、どのような言葉かけをするでしょうか。
【A教諭】
  「君は、自分が置かれている状況をどうして理解できないんだ。友達や先生がこれだけ心配しているのに、肝心の本人にやる気がないのなら何を言っても無駄だな。
後で泣きついても知らないからな。そうなったときのことを今から考えておきなさい。」
【B教諭】
 「もう、君には任せておけないので、今後やるべきことをプリントにまとめました。一緒に取り組んでいこう。まずは授業には教科書を用意すること、黒板の内容をきちんとノートに写して毎日私に見せること。それから、課題の締め切りは明後日だけど、どこまで終わっているんだい。」
【C教諭】
 「以前、英語が好きだから、将来はそっちの方に進みたいって言ってたよね。君ならできると思うよ。だけど、数学は嫌いだからといって、授業中におしゃべりをしたり寝てしまったりするのはまずいぞ。夢を叶えるために、今やるべきことは何だろう。私も応援するから頑張って夢を実現させようよ。」
 やる気が起きず、真剣に取り組めないM男のような生徒の親や担任の先生は、きっと頭を抱えていることでしょう。いくら言葉で「気持ちを入れ替えろ。」、「やる気のスイッチを入れろよ。」と言っても、M男は、「おれの心はCDじゃない。そんなに簡単に入れ替えなんかできないよ」、「おれは蛍光灯じゃないんだ。スイッチ一つでやる気の光なんか点くものか。」なんて思っているかもしれません。
 3人の先生の言葉を分析
 A教諭は、周囲の人たちが心配して、どんなに言っても全く変わらないM男にとうとう愛想を尽かしてしまったようです。そして、これ以上指導することをやめ、突き放すことで自ら気付かせようと方針を変えました。また、痛い目に遭うことではじめて自覚できるとも考えました。
 しかし、この言い方は少し乱暴かもしれません。M男には、果たして自分だけで取り組む力があるのでしょうか。「どうせおれは何をやっても駄目なんだ。」と投げ出してしまうことはないでしょうか。
 このような手荒な指導は、生徒との信頼関係を十分に深めていないと失敗します。また、試験の結果が悪かった時のフォローも考えておく必要があります。よほど指導力がないと難しい方法でしょう。
 B教諭は、これまで行ってきたような働きかけでは、M男にやる気を起こさせることは難しいと考え、このような方法を提案しました。一つ一つやるべきことを具体的に指示して取り組ませることにしました。しかし、これでは自分で考えることができず、指示したことしかできない生徒になってしまいます。その結果、自分の行動に責任が持てず、「先生が言わなかったから・・・。」などと、責任転嫁する恐れがあります。
 担任が一方的に与えるのではなく、M男に考えさせながら一緒に計画を立てて、自主的に取り組めるよう導いていくことが望ましいのではないでしょうか。
 C教諭は、M男の得意分野や将来の夢を話題にして自信を持たせようとしました。そして、今の問題点を指摘し、どうすべきかを考えさせようとしています。
 担任は、要所要所で適切なアドバイスに心がけ、M男に少しでも変化が見られたら、声かけや学習の進行状況を確認するなど、応援していることを伝え、やる気を継続させたいと考えているようです。
 いずれの場合でも、保護者との連携も重要なポイントとなります。M男の生活態度や学習状況をしっかりと理解してもらい、担任として何とかしたいという気持ちを強く訴えて協力をお願いします。時には、あらかじめ保護者と作戦を練ってから本人と面談することも考えられます。
 ところで、やる気のスイッチが入らない生徒には、様々なタイプがあります。それぞれのタイプに合った働きかけをしなければ、なかなか相手には伝わらないものです。そこで、例えば以下のような考え方はいかがでしょうか。
① 何とかなるだろうとか、先生や親が何とかしてくれるだろうという他力本願的なタイプにはA教諭のような言葉かけを。
② 勉強の仕方がわからず、やり始めてもすぐに諦めてやる気をなくすタイプにはB教諭のような言葉かけを。
③ やればできるはずなのに、勉強以外のことに夢中だったり、低い目標設定でがんばろうとしなかったりするタイプにはC教諭の言葉かけを。
 いずれにしても主役は生徒ですから、担任は裏方として、生徒の自主性を育み、自覚を促すためにはどのような働きかけが効果的なのか、研鑽、工夫に心がけたいものです。

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