第25回 北海道生活科・総合的な学習教育研究大会 釧路大会
3年前に、K校長に会長職を譲ってから、生活・総合とは縁遠かったのですが、退職の年に助言者を頼まれました。錆びついた頭に3年生の総合の指導案が事前に送られてきました。見慣れない言葉の多さにブランクを感じ、勉強し直して臨みました。
《ルーブリック》 「新しいカタカナ言葉?」アクティブ・ラーニングを覚えたばかりだと言うのに、「ルーブリック?」どうも評価のことらしい?ということが分かりました。
黒上晴夫先生(関西大学総合情報学部教授)
メディアを活用した授業デザインやカリキュラム開発、「学び」に関するシステムや評価法などについて実践的な研究を行っている。『総合的な学習のための評価への羅針盤』(日本文教出版)『教育改革のながれを読む─高次な思考力育成を目指して』(関西大学出版部)など、著書多数。
「ただでさえ忙しいのに」「評価基準なら学習指導要領で十分だろう」……そう敬遠される方も多いかもしれません。事実、「評価基準を作るのは、それはそれは大変です」しかし、その大変さを補ってあまりあるほどのパワーを「ルーブリック」は秘めているのです。
ルーブリックとは評価基準のことです。絶対評価を行うための「ものさし」と考えると分かりやすいでしょう。例えばここに、長さ9cmの棒があったとする。9cmと知らせずに長さを問えば、だいたい何cmかを目算することはできても、人によっては8cmだったり、10cmだったりと異なった答えが返ってきます。しかし、正確な「ものさし」があれば、そして測り方が分かっていれば、ほぼ全員が9cmと答えるはずです。つまり、誰が評価してもほとんど誤差がなく、評価が一致し、誰もが「9cmだ」と納得できる。それが「ものさし」であり、「ルーブリック」なのです。
「評価基準があいまいではダメなのです。基準が『○○がだいたいできる』だったとします。でも、人によって『だいたい』のレベルは違います。そうなると、評価がブレてしまいます。」評価基準を作るのは大変でも、評価をすること自体は極めてシンプルに、誰が見てもブレない、ある意味デジタルな『ものさし』を作らなければならない。これが黒上先生の主張です。
ブレない『ものさし』を作ることができれば、子どもたちの学習意欲や学習レベルを簡単に把握できるようになります。また、それによって子どもたちへの助言もしやすくなりますし、支援のポイントもはっきりします。低いレベルにいる子どもに積極的なケアを行うことも可能になります。先生にも子どもたちにも、ともにメリットを生み出すのがルーブリックなのです。黒上先生は、数ある活動内容の中でも特に「思考」「考える力」に焦点を当てたルーブリック作りを進めています。
《思考スキル・シンキングツール》 指導案に「ベン図」、「Xチャート・Yチャート」、
「くま手図」、「ボーン図」、「コンセプトマップ」、「ピラミッドチャート」、「PMI」???
何だ!これは? 研究紀要にはこう書いてありました。
単純に『思考する』といっても、言葉は曖昧である。『思考する』とはどういうことなのか、曖昧に授業が進み、子どもたちは何をどう考えたらよいか分からず、困ってしまっている場面が多く見受けられる。そこで『思考する』という言葉を「思考スキル」という子どもの行動レベルに具体化することとした。
整理・分析の過程においては、「思考スキル」を明確にして分析することにより、探究の質が高まっていくと考える。しかし、これだけでは具体的な手法とはいえず、子どもたちにはなかなか伝わりにくい。そこで「シンキングツール」を活用するのである。
「思考スキル」とは、社会の変化に求められる人材や能力、21世紀型学力との関連で、今まさに身につけさせたい子どもたちの能力です。情報を可視化し、思考を方向付ける思考ツール、全国学力・学習状況調査や総合的な学習の時間の指導資料に見られる思考ツール。など今、求められる思考力の育成と思考ツールへの理解が、小学校現場では求められています。
思考ツールの第一人者、黒上教授が、教育目標としての思考力について、その課題とさまざまな思考スキル例、知っておくべき事をわかりやすく丁寧に解説しています。
《参加しての感想》 全道大会を開催地区は、それぞれの特色や新しい課題に取り組み、それまで積み上げてきた研究の成果を発表します。そして、参加者は、学校を休んで、出張旅費をもらって参加するわけですから、それだけの成果(学ぶべきこと、参考になること、最新情報など)を期待します。
釧路大会では、特に新しい課題(「ルーブリック」や「シンキングツール」など)に意欲的に取り組みました。その姿勢は高く評価されました。しかし、授業にどう生かされているか、実践レベルでは、まだ課題が残っているように感じました。
私が助言を担当した授業は、3年生の「阿寒川」を題材にした総合でした。上流、中流、下流の調査から、植生や生き物の調査、上・中・下流の比較、ゴミなどの環境問題へ発展する内容でした。20数名の学級でしたが、1時間いっぱい活発な意見が飛び交っていました。
教室の後ろの掲示板には、これまでの活動の記録が「発見カード」と活動の写真で紹介されていました。阿寒川の様子は、段ボールで作ったびょうぶ風の掲示物で展示していました。これは生活・総合の研究会でよく見られる光景です。
国語や算数の授業は、「水戸黄門」や「名探偵コナン」のような時間内で解決する番組に似ています。それに対して、生活・総合は、朝のテレビ小説のような番組構成なので、その時だけ見てもよく分からないのです。この点では、よく工夫された環境構成だったと思います。
生活・総合では、阿寒小では「阿寒川」、函館は「市電」、旭川は「動物園とコラボしたうさぎの飼育活動」、北見では「ハッカ」とそれぞれその地域の特色を生かした題材を開発します。しかし、阿寒川には、ニホンザリガニはいなく、ウチダザリガニが生息している。函館の市電は年々利用者が減少している。ということを調べて分かる。というのが総合の目的ではありません。
~総合では、子ども自身が価値を感じ、自分ごととして学ぶ姿を目指す。学ぶことの意味を捉える。学び方を身に付ける。対象と自分とのかかわりで学び、学び方やものの考え方を身に付ける。子どもが、自分の成長、よさや可能性について自ら気づくことができる。教師は「学びの世界」が拡がっている事実に気づかせていく~???と言っても分かるようで、よく分からない?
端的に言えば、生活・総合に取り組んで成果を上げている学校は、全国学力調査のB問題の正答率が高いということです。そして、アクティブ・ラーニングの原型は、生活・総合にあるということです。ただし、総合には教科書がないので、単元開発から、教材準備、評価など手間暇がかかり、教師の意欲や資質・能力が問われるのです。アンケート調査では、「生活・総合はなくなればいい」と思っている教職員の割合は高いのです。生活・総合の一番の課題はここにあると思っています。
🤷♂️最後の年、全道小学校校長会教育研究大会(十勝大会)、生活・総合の全道大会(釧路大会)、この後、全連小全国大会(山口県)、網走小公開研究会の助言も頼まれています。「退職の年に何を今さら、勉強しなくても…。」とある先生に言われました。最後の悪足掻きです。
0 件のコメント:
コメントを投稿