学校の統廃合問題の今
北海道特にオホーツク管内は小規模校が多い。20年前は約180校の小中学校があったが、現在は125校まで減ってしまった。減った55校の大半は小規模・へき地複式校である。廃校になった地域の人は、「運動会も学芸会もなくなって寂しくなった。お祭りには、神社の境内ですもうをとったり、子ども神輿もあったり、楽しかったよねえ~。」と話す。児童数の減少は、小規模ゆえに目立つ。その変化に気付いた保護者たちが、町中の大規模校へ(今は町中にも大規模校は存在しない)といち早く子どもを自ら移そうとしている。そうやって減っていった後で最後に残った少数の子どもの親たちの間では、「早く統廃合を進めて、子どもたちが大きな学校で学べるようにしてほしい。」と行政に訴えるようになる。どうもそういうことが起きている。
要するに、学校統廃合の起因は、自治体財政の減少やその学校の教育内容にあるのではなく、人々の不安の増大のようだ。
もちろん、中には子どもの数がみるみる減っていく現状を見かねて、市町村側から進める統廃合もあるが、そうしたケースでもやはり、その底流に保護者たちの不安があるから統廃合が進むわけで、地域から「学校を残してほしい」という抵抗の声が強く出れば、行政は無理な統廃合を進めず様子を見守るのがふつうである。そうして残った学校も数年後には統廃合となったケースをいくつも知っている。しかし、最近は、こうした統廃合をめぐる背景が大きく変わりはじめた。
「こども園で一緒だった友だちと1年生になるとき別れてしまう。そして、中学校でまた一緒になる。中学校の大人数の中でなじめるか、いじめに合うのではないか心配。」という親の声がある。
オホーツク管内の3市以外は、ほとんど小学校と中学校が1校である。1学年1学級でクラス替えもない。こども園も一か所しかないと2歳から預けられた子は、中学を卒業するまで14年間、同じ集団で過ごすことになる。
中学3年生に「なぜ、地元の高校に進学しないのか?」と尋ねると、「高校生活くらい新しい仲間と過ごしたい。」と答えた。地元の高校に進学すると17年間環境は変わらないのだ。地方の町は、学校の統廃合と地元高校の存続問題も抱えている。
小規模校には、大規模校にはない良さがある。特認校のようにあえて小規模校を選択する親もいる。小規模校の教員は、その特色を生かした学校づくりに努力している。小規模校から市内の中学校に進学した子は、基本的な生活習慣がしっかり身についている。生徒会や部活動で活躍している子が多い。と聞くことがよくある。学校の規模だけで良し悪しは決められないのだが、今の保護者には伝わらないのか?