子どもたちの多くが、授業が終わると児童センターにやってくる。お迎えは18時を過ぎる。土曜日も朝からやってくる。中には、2歳からこども園に預けられている子もいる。児童センターに来る子は、きまって支援員の膝を奪うようにして乗って甘える。聞くと、学校や家庭では、そんなことはないという。女性の社会進出に子育ては、社会全体で行うことで行政は、子育て支援が手厚くなった。選挙になると「子育て対策」は、必ず公約に入る。児童センターには、支援を要する子も多い。「お母さんは、気の休まるときはないだろうから、少しでも手助けができたら…。ここは学校でも家でもない。子どもたちにとって一番居心地のいい場所になればいい。」と児童センターの職員は言う。
人間の教育は、誕生から始まり、
母親こそ人生最初の教師である。
だっこやひざの上からはじまる。
赤ちゃんの心の研究者パブゼク博士は、親には「直接的な育児能力」(本能的に子どもを育てる力)があると言います。お母さんは赤ちゃんが幸せな気持ちで興味が湧くように、明るく優しいリズムや調子を選んであやしたりします。これは知識で教えられるものではなく、幼い頃に愛された体験を基盤に親になると自然に湧いてくるものです。この直接的育児能力は、未開発国に豊かに見られ、高度に発達した文明社会の母親は高等教育により、頭でっかちになるとだめになるとも警告しています。
戦後のベビーブームに生まれた世代の人は、母親が洗濯機もなく、素手でせっせと家事と育児をこなしていたのを見て育ちました。子どもの病気も多く、真心と祈りだけがよりどころのその頃の母親は、おそらく直接的育児能力は豊かだったはずです。ところが、今の日本は世界最低の乳児死亡率と最高の平均寿命を誇りながら、子どもたちは苦しんでいます。いじめ、不登校、自殺。仲間と心ゆくまで遊びながら自然に鍛え合う、幸せな子どもの発達環境が破壊されているのです。
しかし、どんなひどい心の傷を負い絶望している子でも、お母さんが真心をこめてわが子を理解するようになると、水を得た魚のように蘇るのです。お母さんには、子どもの心を癒す不思議な力があります。母親とは偉大な存在です。どのお母さんもこの力を持っていることに気付いて欲しいです。
午後6時過ぎ、制服姿の母親が「遅くんなってごめんね。」走って児童センターにやって来る。「遅いよ!」と文句を言いながらも母親にとびつく。中には、きれいに着飾ったお母さんもやってくる。聞くと農家だという。農作業が終わって、シャワーを浴びて、着替えて、お化粧をしてからやってくるそうだ。時代は変わった。しかし、お母さんの不思議な力は変わらない。
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