「花だより」12集(完)の発刊に寄せて
年が明けて、そろそろ身辺整理をしなければならないと本棚の整理を始めました。古い学級通信を開いたのが失敗でした。読みふけってしまい整理どころではなくなりました。
昭和53年新卒で生田原小学校に赴任したときに、水谷 豊が小学校の先生(北野 大)を演じるテレビドラマ「熱中時代」が始まりました。当時社会問題になり始めていた教育現場でのさまざまな困難に、体当たりで熱中する北野先生の姿が共感を呼び大ヒットしました。新米の私は、北野先生になりきって教師業に熱中していました。その日、その日、子どもたちと何をするか、当時は、自分の学級のことしか考えていませんでした。
あれから38年経ちました。規制緩和や教育特区の取組などで学校教育は大きく、しかも速いスピードで変わってきました。そして、今も変化の中にあります。昨年12月に公表された中教審答申「新しい時代の教育や地方創世の実現に向けた学校と地域の連携・協働の在り方と今後の推進方策について」では、「教育は、地域社会を動かしていくエンジンの役割を担っている」とあります。
昨年は、管内校長会長という大役を担い、管内、全道、全国の会議や研修会・研究会に参加し、様々な人たちと交流を持つ機会を得ました。お陰で北海道や当管内の課題が鮮明になりました。いま学校がなすべきこと、教師でしかできないことは何かを考え、学校力を高めていかなければならない。と気づきました。しかし、あまりにも遅すぎました。
これまで達成感・満足感に満ちあふれて退職する先輩を見てきましたが、私は違います。“もっと勉強しておけばよかった。もっと本を読んでおけばよかった。人の為になることをしておけばよかった。もっと何かできたはずだ。”と後悔の念でいっぱいです。
「校長先生、まだ若いよ。ハゲていないし、白髪だってあんまりないしさ、60過ぎても、学校に居ればいいしょ!」と言ってくれた子がいました。「できればまだ学校に残りたい。」というのが本音です。
12年間で忘れられない「心がホッとステーション」があります。
4月に校長室の窓をたたく子がいました。3月に卒業した子です。「校長先生、うちのばあちゃんが、『校長先生の通信読めなくなってさびしくなった。』と残念がっているから、『それなら、私がときどき校長先生のところにもらいに行ってあげる。』と言ったんだけど、いいですか?」
ここまで続けてこられたのもこの子のお陰です。学校と家庭・地域をつなぐことを目的に、なるべく分かりやすく伝える努力をしてきたつもりでいます。「地域社会を動かすエンジン」とまではいかなくとも「風車」くらいにはなったでしょうか。
定年退職いたします。これまでお世話になった教育関係者の皆様、地域・保護者の皆様、たくさんの出会いに感謝します。
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