2019年11月17日日曜日

花だより 書写実技研資料 イソギク


 書写実技研資料
           オホーツク管内書写書道教育研究会 元会長 牧 野 喜 充
小学校の授業で先生方が一番やりたくないのが書写(特に3・4年生)の時間です。「校長先生、毛筆だけ持ってもらえませんか?」と頼まれることがよくあります。先生方自身が毛筆の経験があまりないことと準備と片付けが大変だからです。1時間に半紙3~4枚書くのがやっとです。それで上達するとは到底思えません。パソコン・スマホの時代になって手書き文化はすっかり姿を消していますが、学習指導要領から無くなることはありません。日本の文化を守る意識は、まだ強いようです。
西郷隆盛、勝海舟など昔の偉人には達筆な人が多くいました。一筆書いて宿代の代わりにしていたとかで各地に書が残っていて、よく「鑑定団」に出てきます。しかし、現在の知識人と言われるテレビによく出るコメンテーターの手書きのフリップを見ると「これじゃあ、お金は取れないな?」と思います。
若い先生の板書も気になります。「誰だ!黒板に勝手に書いたのは?」と子どもたちに聞くと「先生です。」と???やっぱり書写は必要なのかもしれません。
以下、小学校の校内研修に招かれたときの資料です。
まず先に言っておきます。「字の上手下手と知能とは、無関係!だそうです。」
【書写指導のねらい】
筆順に従って正しく、整えて、読みやすく、目的や必要に応じて、調和よく、速く書く能力を育成する。(学習指導要領)
「書写」「習字」「書道」同じようで意味が違う? 
1 準 備 (できるだけ休み時間のうちにやっておく)
① 余計なものは全てしまう。墨を飛ばしていけないものを片付ける。
*墨液の入れ物は、机の上には置かない。使ったらすぐしまう。
② 白のフリフリ服は厳禁(書写(毛筆)の時間は、通信で必ず知らせる。)
③ 机は前向き、隣と離す(前後左右を広くとる)
④ 水黒板と水黒板専用筆 筆は、一度も墨を含ませていないものを必ず使う。
⑤ 水黒板の代用の実物投影機(プロジェクター)今はこれが便利。
⑥ バケツ(水)数個
⑦ お手本(B4版) 名前のお手本も用意する。
⑧ 新聞紙(机の上に一枚、机の左下に一枚)*バケツの底に敷く
⑨ 半紙を配る。(一人4枚から5枚、一枚は、名前を書くとき用にとっておく)
⑩ 筆ほぐし(墨を馴染ませる) 
2 道 具 書道用品のことを「文房具」という
① 筆~「弘法筆を選ぶ」ある程度高価な筆を使うとうまく書ける。
・種類~鼬(いたち)、羊毛、狸、馬、その他(赤ちゃんの髪の毛)
*千円以上の筆がいい。(高い筆だから、大事に扱うように子どもに言う)
  ・100均の筆は使わない方がよい。 
② 硯~今は石ではなくプラスチックでリバーシブルが主流、裏は書き初め用 墨液を使うのでこれで十分
・墨の量は少なめに入れる。使い切るようにする。残った墨を片付ける時に、よく悲劇が起きる。
③ と墨液・墨汁~墨のすり方は、最初に教えるだけで墨液を使う。
 ・お母さん大好き、洗濯で落ちる墨(100均の墨)は、時間が経つと消える。
 ・作品展示用(作品募集)には使えない。
 *墨液と墨汁の違いは?商品名の違い。開明は「墨汁」、呉竹は「墨液」
 ④半紙~全紙(和紙)を半分にしたもの 
  半紙は243mm×333mmB4用紙257mm×364mとほぼ同じ大きさ 
 ・書き初めで使うのは、条幅(じょうふく)という。
 ⑤文鎮~セパレーツが主流 両端に斜めに置く
 ⑥下敷き~しわしわ、よれよれなら、使わない方がいいが、今の下敷きは、しわになら
ないように工夫されている。最新の習字セットを購入するのが良い。
 ⑦習字セットについているスポイトは、水を硯に入れるもので残った墨を吸い取るもの
ではない。
3 準 備
(1) 半紙は体に正対しておく。
  *書道、柔道、剣道、華道、茶道など、道が付くのは、すべて礼儀や姿勢を重んじる。
  *書写は、わいわいガヤガヤやるものではない。
(2) 硯は右に、硯の陸の部分は手前に置く。(書は、左利き用にはなっていない)
  習字道具以外のものは机の上には置いていないかチェックする。
(3) 筆が固まっていないかチェックする。(ほぐして、墨となじませる)
(4) 下敷きはしわくちゃになっていないかチェックする。
4 呼吸とリズムと空間バランス
(1) 書は、白と黒、濃い・薄い、速い・遅い、対照の芸術
(2) 等間隔と空白を包み込む(美的感覚が求められる)
(3) 息を止めて書くと曲がらない
(4) 現代人の文字事情
① 字の形は、それぞれ違う。活字ように全て□ではない。美的感覚が求められる。
② 今は横書きが主流になり、右払いが中途半端で「とめ」になっている。縦書きの中心線をそろえる感覚がない。
③ 丸文字、ゴシック体などのフォントに慣れ、正しい筆記体の文字が書けない。
  *上達のコツは、上手な字を多く見ること
5 筆遣いと評価
(1)左利きの子への指導
・左利きの子にも右で書かせてみて、どうしても無理なら左にする。
・毛筆で大きな字は右、硬筆は左、どちらでも書けるとかっこいい!
・書写の評価は、毛筆の作品だけで決まるわけではない。
(2)筆の入り、おれ、とめ、はらいは、口で説明しても子どもには分からない。
   手を取って一緒に書いて感覚で覚えるしかない?
*評価は、赤を入れる。コメント書く。「とても力強い字」「筆の入り、とめがとても
ていねいに書けました」など
 *できるだけ速く掲示(展示)する。
(3)作品展の審査(管内小中学校書道展の場合)
・学年で課題(3年「ビル」4年「左右」5年「成長」6年「友情」)が決まっている 
ので、そんなに差が生まれない。最後の決め手は「名前」、名前が丁寧で上手だと
「入選」間違いなし。その子の力量(センス)が出る。
・どんなに上手でも半紙が汚れていると審査対象外になる。
・小学生の場合は、濃く、太く、大きい字が高評価になる。
・作品展の入選は、筆と半紙と墨で決まる。上質なものは、見た目が全く違う。
6 反故(「ほご」~書に由来する言葉 書き損なったりして不要になった紙のこと)
(1) 新聞紙を半分に切って綴じた間に、書いた作品(清書)をはさんでいく。
(2) 反故(清書以外の半紙)は、筆の後始末の時に利用する。(硯の残り墨を吸い取る)
7 道具の後始末(これが一番厄介、先生方がそれぞれいろいろ工夫している)
 *後始末の前に、清書した作品を提出する。(ある程度乾かしてから、新聞紙にはさめる)
(1) 筆の後始末が最重要ポイント(反故でよく墨をきる。穂先を傷めない。お湯で洗わない。)
(2) 筆の穂先を整える。(キャップはしない。最初に付いているキャップは、使い始めたとき捨てる。)
(3) 反故(四つ折りにして)で硯の墨をふき取る。
(4) ふき取った反故は、用意しておいたごみ袋に捨てる。(段ボールの箱、教室の前と後ろに置く)
(5) 片付けが終わった後、手をチェックする。
*字の上手に書ける子は、手が汚れていない。(余計なことをしていないから)
(7)墨をこぼしたときの始末の方法
*薄めた洗剤とトイレットペーパーでふき取る。新聞紙で拭くと広がるだけ
(8)できれば教室以外で図工室など、流し台のある教室がよい。 


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