2019年11月21日木曜日

花だより 世界無形文化遺産「和食」 リュウノウギク


 世界無形文化遺産「和食」 
 その土地の美味しいモノを食べるのも旅の楽しみの一つです。財布のひもも緩みがちになり、ちょっと背伸びしたお店に入ってしまいます。そして、年をとると和食中心の選択になりがちです。東京や京都、そして今年は、山口を訪れました。北海道(オホーツク)とは違った店の佇まいがあります。風情のある中庭、いかにも高級そうな置物や掛け軸、そして器に洗練された盛りつけの料理とおもてなしに豊かな気持ちになります。なるほど世界遺産です。
 料理人として伝えたいこと       
           土山 憲幸氏 (元赤坂プリンスホテル総料理長) 
 おもてなし 料理の力は30%で、あとは雰囲気や環境、そして「おもてなし」が大きな役割を占めます。料理人は、季節にあった新鮮な食材を、その持ち味を生かすように調理し、盛り付け、取り合わせ、器との調和など見た目の美しさも考え、温かいものは温かく、冷たいものは冷たくお出しし、最高のおもてなしをするように心がけます。人に対する暖かな気遣いが「おもてなし」の基本です。
 日本人の平均的な口の大きさは約3センチだと言われています。ですから料理をつくるときには、約3センチに切ってお出しします。刺身、お新香、煮物でも基本は3センチです。それ以上のものは箸で崩せる硬さにします。例えば、がんもどきは耳たぶくらいの硬さ、焼き魚も切り身して箸で崩せる硬さに焼き上げてお出しします。
 五味(酸・苦・甘・辛・塩)昔は、冬は保存食の味噌漬けや醤油漬けなどを食べていました。塩分を摂りすぎると腎臓に負担がかかりますから、春先に酸っぱいものやえぐみのある山菜などを食べて冬に身体に溜まった毒素を出します。日本は「苦み」を重視する傾向があり、これは他の国の料理と違うところです。
 季節に合った旬のものを食べることや五味をバランスよく食べることが身体のためにもいいのです。五味が全て入っている食物が「味噌」です。味噌汁の中に五色の食材を入れたのが御御御付け(おみおつけ)です。「御」という文字が3つも付いた、たいへん身体に良い食物です。
 料理はバランスをとることが大切です。まるい器には四角く盛り、四角い器には丸く盛ります。そうするとバランスがとれて心が落ち着き、きれいだな、美味しそうだなとなります。
 夏は薄い器やガラスの器を使って涼しそうに盛り、冬は厚ぼったい皿になだらかに盛ってあげると温かく見えます。これが盛りつけの基本です。 
 「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されました。これは料理だけでなく、食べ物に関わる生活様式や自然の中に生かされていることを感謝しながら生活する日本人の食文化も含まれます。
 料理で一番大事なのは「自然」だと思います。自然が保たれていないと美味しい野菜や魚、肉は育ちません。人間は全てのものに感謝と思いやりの気持ちを持ち、もっと謙虚に生きなければならないと思います。「いただきます」「ごちそうさま」と、食前、食後に手を合わせる習慣も大事にしていきたいと思っています。
 5年国語の教科書「まんがの方法」の中に“まんがは理屈ぬきにおもしろい”でも、よく調べてみると独特の表現手法や作者の工夫が見られる。それを理解するとさらにまんがを楽しく読むことができる。美味しい料理は、理屈抜きに美味しいと思っていましたが、そこには伝統・文化から生まれた洗練された「おもてなし」のこころがあったのです。

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