2019年11月7日木曜日

花だより 進化し続けるAIと子どもの成長 シラタマホシクサ 

  進化し続けるAIと子どもの成長
                    奈良女子大学特任教授 麻生 武
≪2030年以降の社会 企業の淘汰と職業の淘汰≫
大きな社会変化はすで起きています。グーグル、アップル、アマゾン、フェイスブック、中国のファーウェイ、アリババといったテクノロジー業界の巨大企業が、準地球規模とも言えるようなビックデータを集め、恐るべき資金集積力を活用し、コンピュータサイエンス・テクノロジーに巨額の資金をつぎ込み、これまで想像もつかないようなネットワーク化された社会を構築しようとしています。
 2030年代あるいは2040年頃に汎用AIが出現すると言われています。完全な汎用ではなくても、特定領域においてかなり柔軟性をもつAIであれば、人間的労働の多くはAIによって代替されてしまうでしょう。その兆候はすでに始まっています。2030年以降には、その規模が半端なものではなくなります。ドローンや自動運転が普及すれば、小売業だけではなく運送業にもほとんど人はいらなくなります。
「ロボットは東大に入れるか」のプロジェクト終了の2016年において「東ロボくん」はすでにMARCH(明治、青山学院、立教、中央、法制大学の頭文字)合格の水準(SS53~65)に達していたことを、プロジェクトリーダーの新井氏は危機感をもって指摘している。
 「東ロボくん」は読解が苦手です。ところが、読解力において「東ロボくん」に優っているとは言い難い、教科書を読めない子どもが大勢いることから、今のままでは、この子たちが成長したときにAIに職を奪われてしまう危機感をつのらせています。弁護士、税理士、医師などの一部の仕事もAIで代替可能なことは、今日でもすでに指摘されています。技術進歩が経済成長と雇用の減少を生み出すのは普遍則です。汎用AIが出現する2030年以降、「需要不足による失業」が増加し、AIに代替えできない仕事を持つ者が労働可能人口の約1割になり、残り9割は仕事がなくなってしまう事態になってしまいます。それを21世紀における新たな「役立たず階級」の出現として危惧している歴史学者もいます。また、新井氏は、AI社会では、企業が淘汰されていく危険も大きいと指摘しています。とは言え、あまり悲観的になる必要もないかもしれません。私たちには、子どもたちという希望のカードが残されているからです。未来は、私たちと子どもたちによって、まだ、変えていけるからです。

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