教育ジャーナリスト文化学園大学名誉教授 野 原 明
(「教育展望11月号 要約:牧野)
この数年、文部科学省の施策がさまよい続けている。
■高大接続システム(大学入試)改革の実施
文部科学省は、政府の教育再生実行会議の提言と中央教育審議会の答申に基づいて、大学入試センター試験に代え、2020年度から「大学入学共通テスト」を実施することを決めた。
*単なる知識の量だけでなく、思考力・判断力を見る記述式の問題を出す
*英語の「読む・聞く・話す・書く」の4技能を測るためのテストを民間業者に委託する。
▼記述式の出題・・・採点の公正・公平性の確保などの問題
▼英語の民間試験・・・全国高校長協会が反対を表明し、民間業者は、責任を持った対応が難しいことから、文科省は延期を表明
■学習指導要領の改訂
今回は、教育内容を改訂してきたこれまでと異なり、教育の方法についても改める方向を示している。
「主体的・対話的で深い学び」「社会に開かれた教育課程」「教科等横断的な教育課程の編成」「カリキュラム・マネジメント」がそれである。
特に「教科等横断的な教育課程」の編成は、いわゆる「生活・体験主義」の教育課程の実現を図るもので、これまでも論争が繰り広げられ、「這い回る経験主義」と酷評され、排除されてきた経緯がある。
これを進めようとするならば、現在の教員に対する指導・研修が必要だが、その方策は不明のままである。
■小学校の外国語活動の重視について
授業時数の確保は全て学校に委ねられ、現場は、どこから捻出するか悩んでいる。
「学校の働き方改革」で学校内業務時間の上限を示しているのと新たな指導要領が求める業務の拡大とは明らかに矛盾している。学校に丸投げしている行政の無策が目立つ。
■教育行政の混迷
自民党教育再生実行本部の提言に始まり、政府の教育再生実行会議を経て進められる官邸主導・現場軽視のやり方に原因があると考えざるをえない。
日本私立大学連盟の鎌田会長は、「最近の文科行政はきちっとしたビジョンがないまま(官邸主導の有識者会議などから)責められればそれに応え、パッチワークみたいだ」と批判している。指摘されるような主体性のない行政の責任は重い。
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