2019年1月10日木曜日

花だより トキワコザクラ 今、若手に必要な教育技術


教師教育の深層 ~今、若手に必要な教育技術~
                     追手門学院小学校講師 多賀 一郎 
≪協同学習か?一斉授業か?≫
 若い実践家や大学の教員の一部の中に
「一斉授業は旧い、時代遅れだ。」
「一斉授業では死んでいた子どもが、協同学習では生き生きする。」
「一部の名人教師しか、一斉授業は成立しない。」
 等と、声高に発信する方々がおられます。
 まず、この「協同学習vs一斉授業」という対立の図式そのものが成り立ちません。
 ≪下手な授業≫
 下手くそな一斉授業では、確かに子どもたちの目は授業が進むにつれてどんどん死んでいきます。そして、授業が分からないという子どもたちがたくさん置いてきぼりを食らいます。その状態に悩んでいた若手が協同学習中心の授業に切り替えたら、子どもたちは活動的になり学習が成立して、何もかも解決したように思い込んでしまうのです。
 未熟で子どもを見とる力がないので、形だけを真似ることしかできないのが若手です。実際に教室で何が起きているかを本当には分からず、ただ現象的には活発であることに満足を覚えている若手は、たくさんいます。
 下手くそな一斉授業があるのと同じように、下手くそな協同学習というのもあります。
 不遜なものの言い方をしますが、私はどのような学習形態であっても、そこそこの授業ができると思っています。それは教育技術をていねいに身に着けてきたからです。
 大切なのは協同学習にも一斉学習にも通用する教育技術をいかにして身に着けていくかということです。
 ≪多様な授業に対応する≫
 時代は多様性を追い求めています。
 インクルーシブ教育は、教室内の多様性を認めようという教育です。教室にはいろいろな子どもがいて、互いにそのことを認め合うということです。
 アクティブ・ラーニングの学習でも、一人一人が主体性を持って学び始めたら、そこに多様性が生まれるのは自然なことです。
 そして、これから増えていくであろうイエナ・スクール(*一人一人を尊重しながら自立と共生を学ぶ『イエナプラン教育』を実践するスクール。学校法人茂来学園大日向小学校2019年開校)や風越学園等に代表されるオルタナティブ・スクール(*現在の公教育とは別の方針・理念をもって運営されているスクールの総称)という新しい学校の在り方も、多様性の模索だと私は考えます。
 教師には、一斉授業におけるリーダーシップの力も必要です。協同学習におけるファシリテーター(*中立的な立場から活動の支援を行う)としての力もなくてはなりません。
若い先生方には、その両方の力を身に着けてほしいものです。どのような形でも授業ができる力があって、初めていろいろな問題に対応できるのです。
≪教師の技術もいろいろ≫
教師の技術には、大きく3つの考え方があります。
◆1つ目は、「技術として具体的に伝える手立て」
 教材研究の方法をどうしていくかというプランから始まり、話し方、立ち方のようなものは、学習形態にかかわらず必要なものです。保護者対応の仕方も、これに含まれます。ほとんどの教師は、このことを指導します。
◆2つ目は、「メンタルの持ち方」
 これは授業とは直接関係なく、自分の精神的なイメージ・コントロールの仕方や日常の心の持ち方等を教えることです。これは、特に今のメンタルの弱い若手教師には必要なことです。
◆3つ目は、「姿勢」
 これからの教師には、自らを振り返ってこれから先の在り方を創造していく力が求められます。まさしく教師自身がアクティブ・ラーナー(*学び続けることに果敢に挑戦するスピリットと行動力を備えた人)です。その姿勢を育てるのが、教育の課題です。
                      (*注釈)は牧野

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