2019年1月27日日曜日

花だより ミカン 働き方改革が進まない理由


 なぜ、日本人は定時に帰りづらいのか? 心理学から考える「働き方改革」
                  NPO人間科学研究所代表 榎本 博明
 働き方改革の審議の中では、学校の「ブラック」批判に応えるかたちで、教師という仕事の「やりがい」も明記すべきと言う意見がありました。ところが「やりがい」を強調しすぎると、かえって「働き方」がおかしくなる?
 ≪仕事の「やりがい」と落とし穴≫
 日本には、「お金のため」という考え方に抵抗を感じる人が多いです。「お金のために働く」と言う人はいやらしく感じるし、最初から「お金はいくらいただけるのですか?」と聞きにくい風潮があります。他国でしたら、お金の確認・交渉は当たり前です。仕事は「お金のため」にするのが当然なのです。
 そこで日本で強調されるのが、「やりがい」です。「何かのためになること」「自分が役立てること」が示されると、日本人は納得して仕事に打ち込むことができるのです。
 学校でも子どもたちに「お金を稼ぐこと」を正面から教える機会はありません。その代わりに教えるのは、使命感を持つことの大事さであり、自分が成長することの尊さです。そのため今の若い人たちは、強い「成長志向」を持っています。
 ではその「成長志向」が何に結びついているかというと、若者の離職・転職の多さです。「今の仕事では成長できない。」と感じると、すぐに辞めてしまう。あるいは「自分が成長できる仕事は何か」にこだわるあまり、職に就くこと自体のハードルが上がってしまうのです。仕事が「お金のため」と割り切れれば、就職活動もだいぶ楽になります。
 なぜ、日本人はお金にこだわらないように見せるのか?
 日本人は昔からお金よりも名誉を重んじていましたが、人の目も気にします。「みっともないことをしてはいけない」と自己規制しているのです。
 ≪「間柄の文化」と「自己中心的の文化」≫
 欧米文化は、「自己中心の文化」です。自分がどれだけ大きくなれるか、強くなれるか、儲かるか、自分ために生きています。日本人は、小さいときから「人のため」ということを意識しています。「人間」という通り、人と人の間に生きる。これが「間柄の文化」と呼んでいます。
 「自己中心の文化」は、思ったことを言えばいいし、したいことをすればいい、人の影響を受けるのは自分が未熟だから、という考えです。「間柄の文化」は反対に、常に人に配慮しなければなりません。相手の立場や気持ちに配慮できないことが未熟とされます。
 この「間柄の文化」は日本の長時間労働にも影響を及ぼしています。目の前の子どもが何か課題を抱えているとき、「勤務時間が過ぎました、私の給料はこの時間までなので帰ります。」とは、日本の教師はなかなか言えません。相手の立場や配慮することが優先され、自分の役割を限定できないのです。欧米では、教師も勤務時間がきっちり決まっていて、それ以外の時間に子どもの相手はしません。
 *(私見)キリスト教では、労働は神から与えられた罰だと言います。欧米人が、バカンスを長くとるのも罰からの解放なのでしょう。しかし、日本の繁栄は、まさに「間柄の文化」によって生まれたものです。「自己中心の文化」をそのままコピペすることはできないでしょう? 

極寒の朝

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