2020年11月17日火曜日

花だより 出しゃばる親 イソギク

 

 出しゃばる親(過干渉な時代)
            兵庫県尼崎市立大成中学校 教頭 桐山 勉
▼保護者の介入が当たり前の時代
 近ごろ、子ども同士の揉め事に、保護者がわが子を擁護するために介入してくるケースが増えました。
 片方の親が学校に乗り込み、教員に対して相手の子どもを一方的に非難し、時には「向こうの親に会わせろ!」と迫ります。
 子ども同士の揉め事は、双方に原因があるのです。こうした親は自分の子どもに問題があるとは考えずに行動します。我が子を守るために相手を攻撃することが、正義の行いであると信じ切っているのです。
▼不満の残る謝罪は大人への第一歩
 例えば、子ども同士がけんかしたときに学校でよくやるのは、事情を聞きとった上で互いに謝罪させて、「仲直りしなさい」と指導する対応です。
 このとき、子どもは「先に悪口を言ってきたのはあっち」「殴ったのはあいつが先」などと不満を抱えつつも、その気持ちを抑えて謝っています。
 相手を許せない気持ちと折り合いをつけながら謝罪する経験は、とても大切です。社会に出れば、多少の不満があっても謝らざるを得ないことは多々ありますから、子ども同士のケンカの収め方は、このような出世術を身に付ける良い機会だと言えます。この後で保護者に連絡をしておしまいという決着のつけ方でした。
▼子どもの揉め事に親が出てくる
 ケンカに限ったことではありません。子どもは自分の悪いところを都合よく脳内変換(自己防衛本能)しながら、学校で起こった出来事を家庭で話します。
 客観的に物事を判断できる大人や子育て経験が豊富な親であれば、子どもの話に「ちょっと嘘が交じっている」「大げさだな」と冷静に聴くことができます。
 ところが最近は、親が子どもの不満や言い訳を真に受けて、「相手の子をもっと指導すべきだ」とクレームをつけてきます。昔は、子どもの揉め事に親が出るのは恥ずかしいという風潮がありましたが、いまは我が子の不満を代弁することが親の努めのようです。
▼過干渉で育った子どもたち
 午前11頃に、保護者から一本の電話がありました。「私が寝過ごしてしまい子どもを起こせなかったので、遅刻してしまいました。いまから行かせますが、子どもが担任に『どうして遅刻したの?』と聞かれるのが恥ずかしいと言うので、教室では聞かないでやってほしい。」と話されました。
 ちなみに、この子は中学2年生です。起こしてもらえなくても自力で起きられる年齢ですし、親が先回りして連絡するほどの内容ではありません。これほど小さな不安まで親が取り除くことは、子どもの成長に悪影響を及ぼすと考えないのが不思議です。
 このような育てられ方をした子どもは、話術や交渉力などが年相応に育っていません。それが、ますます他者と揉める要因になり、さらなる親の介入を引き起こします。
 また、意に沿わないことは親が解決してくれるので、このタイプの子は自分の意見が通らない相手と関係を築くことが苦手です。そのため、自分に服従してくれる年下の子と遊ぶ傾向にあります。
▼相手の気持ちを考えさせる
 過干渉の親が増えた今、自分の気持ちは相手が汲み取ってくれるものと考え、トラブルを起こす子どもが大勢います。ただ、彼らは他者の気持ちを考える習慣が与えられなかっただけで、それを具体的に指示してやれば、これから成長する可能性も十分あります。
 例えば、トラブルが起こったとき、本人の気持ちを聞くよりも、「相手はどう感じたと思う?」という問いかけを重視することです。過干渉の親に育てられた子には、相手の気持ちを意識する問いかけが大切です。


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