「向き合う」とは
兵庫県尼崎市教育委員会管理部職員課(管理主事) 石 川 一
「子どもと向き合う時間がとれない」「子どもの悩みに向き合うことが大切」などと、生徒指導の場面での児童生徒とのかかわりを考えたときに頻繁に使われる言葉です。しかし、「向き合う」とは、具体的にどうすることなのでしょうか。
今日の社会においては効率よく結果を出すことが求められ、問題解決のために手早く正解を得ようとする傾向が見られます。そのせいで、解決が難しいと思われる問題に出合うと、思考停止に陥り、通説や多数意見に飛びついてしまうことが少なくありません。正解と見えるものであっても、こまやかに内容を吟味し、さまざまな場面に当てはめて妥当性を検証することが必要です。解決できない(できそうもない)問題から目を背けず、答えの出ない宙ぶらりんの状態の中で粘り強く問い続ける姿勢こそが「向き合う」ということなのでないでしょうか。
子どもたちが信頼する先生は、一緒に遊んでくれる楽しい先生、何でも分かってくれる先生ばかりではありません。悩んだり、時には弱みを見せたりする先生も、信頼される先生です。自分がどれほどのことができるのか、と自らのありようを愚直に問うことができる教師こそが、子どもと誠実に向き合うことができる教師であると考えます。
大事なことは、教師自身が児童生徒の行動を見るときの自分の立ち位置に気づくこと(自己覚知)です。問題の原因を本人や家庭に求めるのではなく、子どもと教師は相互に影響し合うという認識に立ち、問題を理解しようとする姿勢が求められます。子どものためにと思って行った行動が期待通りに受け止められなかったときこそ、自分を見つめ直して子どもとの関係に気づき、信頼関係を築こうとする気持ちを持ち続けることが、子どもと「向き合う」ということにほかならないと考えます。
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