2021年8月17日火曜日

花だより アドバイスはできるだけ避ける ヤナギラン

 



 カウンセリングの小さな工夫  最終回
  ~アドバイスはできるだけ避ける~
 学習した内容を具体的に聞く
 子どもが問題を解いたり、宿題の漢字ドリルをやったときに、「えらいねぇ~」などとほめるかもしれません。一般的には、「えらい」などと漠然とほめることよりは、「漢字ドリルをやっているんだねぇ」などの方が、行動を肯定的な雰囲気で指摘するだけで、十分にほめていることになります。
「ドリルの進み方が速いねぇ」「たくさん書いたね」などと速さや量に注目してほめることがあります。こういったほめ方をしていると、勉強にゆっくり取り組んでいるときや少ない量しか書いていないときには、ほめることができません。適切な勉強法は、子どもそれぞれで異なるはずです。
 どんなふうにほめるのがよいのか
 具体的な学習内容に注目して、そのことについて話すのがよいのではないかと考えます。
「“検査”っていう字を習っているんだ。ケンっていう字はたくさんあるから、どのケンか分からなくなったりするよね。」などと言葉をかけます。その声のかけ方が温かく肯定的であれば、学習するという体験そのものがプラスの体験として感じられるのではないかと考えます。体験が肯定的に感じられることによって、次の活動が促されます。
 不登校の子どもも同じです。家で勉強したなどと報告があることも多いと思います。そんなときは、具体的に何を勉強したのか、聞いてみることをすすめます。例えば、「漢字」と答えたとします。そうしたら、「一文字でいいから、昨日やった漢字で何か覚えているのはある?」と聞いてみます。一瞬思い出したり、そこから発展して空書きしてみるなどのやりとりが、子どもの漢字練習の体験を共有することにつながると感じます。
 子どものそばに行く
 子どもの心理的なサポートのためには、大人は子どものそばにいることが重要です。子どもは、身近な大人との関わりの中で身体からの安心感・安全感を体験し、それを基盤として助長していきます。安心感・安全感というものは、基本的に身体的なものなのです。乳幼児は文字通り大人に体ごと抱かれ、心もサポートされます。少しずつ成長するにつれて、身体的な接触は必ずしも必要ではなくなりますが、大人の存在やかかわりを身近に感じることによって、安心・安全を感じるのです。つまり、子どもをサポートするには、「子どものそばに行く」ことが非常に大切です。
 大人の都合に基づいて、子どもを動かそうとする働きかけは、子どもの心のそばまで行ったことにはなりません。子どもの心の動きを感じ取り、つかず離れずの距離を保つことが求められます。そして、大人主導ではなく、子どもの動きに合わせて働きかけたり、子どもの動きを引き出すように働きかけたりすることで初めて、子どものそばに行ったことになります。
≪まとめ≫
 子どもを変えようとすると、アドバイスをしたくなります。ときには、アドバイスをしないことも大切です。子どもが自由に反応し、行動し、振る舞えることが重要です。その点から考えても、アドバイスは逆効果の面があります。本書では、可能な限りアドバイスを避けるような工夫を紹介しました。アドバイスを避けつつ、子どもの相互作用を保っていくことをおすすめします。
 子どもを変えようとする必要はありません。子どもは支援する側との相互作用のある関係の中で自然に育っています。子どものそばにいて、子どもの自由をサポートするようなかかわりを続けることが重要です。

       

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