教師のストレスと生徒指導の難しさ ~深刻化する教師のメンタルヘルス~
関西外語大学 教授 新井 肇
精神疾患による病病気休職者数(平成27年度調べ)は、5,009人(全教職員のうち0.54%)でこの15年の間に倍増している。
教師の疲弊の背景には、わかりにくさを伴う生徒指導の困難性がある。それでも、燃え尽きずに、児童生徒にきめ細かくねばり強く接するには、教師自身の自己理解とレジリエンスが不可欠である。
≪教職生活における危機の原因≫
№ 危機の原因(複数回答可、上位10項目)《人数》
1 手に負えない児童・生徒に振り回される 97
2 職員間の共通理解や協力が得られずに孤立 64
3 保護者との人間関係 51
4 管理職との軋轢 43
5 同僚とのトラブルやいじめ 33
6 多 忙 30
7 異質性の高い学校への転校 14
8 新任(リアリティショック) 10
9 部活動における生徒・保護者との軋轢 9
10 望まない担任や分掌 9
教員が理想と熱意を保持しつつ、困難な状況に遭遇してもバーンアウト(燃え尽き)せずに生徒指導を行っていく上で「レジリエンス」が重要な意味をもつ。レジリエンストとは、「精神的回復力」「弾力性」「立ち直り」「しなやかさ」などと訳される精神的健康に関する概念である。また「困難で驚異的な状況にさらされることで一時的に心理的不健康の状態に陥っても、それを乗り越えていく弾力的な心理特性」と定義されている。
≪レジリエンスを構成する3つの要素≫
① 将来への期待や夢、目標をもつ「肯定的未来志向」
② 多様な物事に対して興味や関心を示しチャレンジする「新奇性追求」
③ 自分の感情を制御したり、切り替えたりすることができる「感情調整」
*『教師を辞めようかな』と思ったら読む本 新井 肇著 明治図書2016
教師である以上、程度の差こそあれ困難な状況に陥ることは必至である。まして、学級崩壊、いじめ、暴力行為などの生徒指導上の課題と直面する教師は、他の職種とは比べものにならないストレスフルな状況に遭遇したとして不適切な指導を行ったりせずに、児童生徒にきめ細かくねばり強く接していくためには、「レジリエンス」を身につけることが不可欠であろう。今後、教師のメンタルヘルス支援にとどまらず、生徒指導の力量形成の視点からも、教師一人一人のレジリエンスの向上を図る取組の具体化が求められる。
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