道教委 高橋元教育長の講演を思い出す
学力テストの点数を上げるために、テスト対策や点数競争をさせようと言っているのではありません。「生きるために最低限必要な知識が北海道の子どもたちにきちんと身についていないのではないか」、「物事に真摯に取り組もうとする姿勢が育てっていないのではないか」、「こうした生活習慣を引きずったままで、一人前の大人として地域社会を担い、子どもたちを生み育てていけるのだろうか」という危機感があるのです。
◇「全国平均以上」にするという目標について
「機会均等」は義務教育の根幹をなす理念です。北海道に生まれたから、北海道のどこで生まれたからということで、本来、子どもたちの学力に大きな差があってはならないものだと思います。こうした問題意識の下で、道教委は「学力を全国平均まで上げる」という大きな目標を掲げ、様々な学力向上施策を打ち出しましたが、結果はご存じのとおりです。
こうした道教委の動きに対して、「平均点さえ上げればいいのか」とか、「点数競争を煽るのか」とか、「過度な競争を助長するのではないか」という意見がありました。平均点を目標に掲げているのは、基礎学力を一人一人の子どもに身につけさせるという問題であり、平均点云々の問題ではなく、平均点に矮小化すべきではないと考えます。
九九ができないまま、アルファベットが書けないまま、義務教育を卒業していく子どもたちがいます。本道の高校は全入状態です。今、高校では、義務教育段階の学び直しを学校組織を挙げて行っているという状態です。定時制高校については、小学校レベルの基礎に立ち返って学び直しを行うカリキュラムを組まなければならない状況にあります。
基礎学力の定着や学ぶ意欲が十分ではなく、学習についていけない子どもは、高校を中退しているのです。10%近い「非卒業率」となっています。(40人学級で4人は高校を中退している。)
道内の多くの企業から、「道教委は高卒者をもっと採用して欲しいというけれども、基礎学力がない、付随して我慢強さや粘り強さが足りないので、きちんと仕事ができない。」と言われています。
◇この問題の2つの側面
一つは、「子どもたち一人一人を自立させることができるかどうか」という問題と「地域の発展」という視点です。
全道では、高校卒業者の9割が道内に残っています。本道の子どもたちの地域残留率は非常に高い状況です。地域に残る子どもたちが自分の足で立っていけるのかどうか、これは地域経済・地域社会の存続・衰退に直結する問題なのです。あらためて、初等中等教育の教育課程を、実社会との連続線上で捉える視点を教育関係者全員が強く持たないといけません。
「全国平均点以上を目指す」という目標、平均点は結果に過ぎません。各学校では、正答率のバラツキを分析され、対策を講じているでしょうか。大事なのは、一人一人の子どもに、自立して生きていくために最低限必要な基礎学力をきちんと身につけさせることです。
一人一人に最低限の学力を身につけさせて社会に送り出す。「基礎学力保障」なのです。そのための取組を着実に行えば、「結果として」平均正答率は全国を上回るはずです。「全国平均を目指す」と掲げたのは、そういう意味です。
しかし、学校を取り巻く客観的情勢に目をやれば、経済的に困難な要保護準要保護世帯が増加傾向にあります。また、保護者からのニーズも多様化しています。児童虐待、過疎化に伴う地域の教育力の低下もあります。この目標達成には、先生方や教育行政だけでは確かに困難な課題です。
しかし、目の前の子どもたちに視点を置いて考えれば、そのことを理由に我々が現実から目をそらしたり、言い訳をすることは許されるものではありません。これは教育を「単なる社会の従属変数(社会変化に無力である)と考えるのか、「教育の力で人を育て、よりよい社会をつくっていこうとするのか」という問題です。
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