教職員の心のケア
富永 良喜 兵庫教育大学名誉教授(心理学)
教職員は自らの働きすぎに気づかず、メンタルが不調になってしまう例がよくあります。現場感覚からすると、4%の教職調整額を上げるよりも業務を精査して減らしてほしい。今は帰れと言われても、結局、家で仕事を持ち帰ってやるだけの話で、何ら長時間労働が解消されるわけではないのです。
定時に帰れない状況は解消されていません。
教職員は個別事案にすごく時間を割いています。不登校、いじめ、生徒指導。そこに親が子どもを守りたい一心で先生に面談を求め、夜遅くまで話し込んだりすることがあります。それに子どもや保護者からの暴言や暴力を受けたときでも自分一人で飲みこもうとしがちです。自分の中だけで処理しようとしたとき、暴言や暴力のストレスがどれだけ心身に影響を及ぼしているか初めて気づくのです。
その対策の要になるのは、予防教育、メンタルトレーニングです。どんな物の言い方、どんな行為が人を傷つけるか。傷ついたときどうすれば回復できるかを学んでおくべきです。それは教職員だけでなく、子どもたちにも必要なことです。
「豊かな心の育成」が道徳教育の柱になっていますが、心の健康教育は位置づけられていません。心の健康授業は、小学5年生と中学1年生の「保健」で計7時間しかありません。全学年で心の健康授業ができるように学習指導要領の改訂してほしい。そう簡単にできないのなら、まず、ストレスについて学ぶことが必要です。一人で悩まず、仲間を頼ってみることからまずは始めて欲しい。
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