2023年11月23日木曜日

花だより 先生がよく使う「指導が入る」とは? ピラカンサ

 

「指導が入る」とは?
      尼崎市教育委員会学校教育部学校教育課生徒指導担当係長 西村 純一 
                             (牧野要約)
*しどう【指導】 ある目的に向かって教え導くこと(『広辞苑』第5版岩波書店)
 ~学校では「指導する」とは言わないで「指導が入る」と言う?~
 生徒指導の先生がよく使うのが「指導が入った」「指導が入る」という言葉です。通常の会話では、単に「指導する」と言いますが、あえて「指導が入る」と言うには意味があります。
【エピソード】
 担任の若い先生は、生徒指導担当のベテランの先生から、「先生のクラスのA君は、授業中の態度が悪いので注意をしておきました。先生からも改めて指導を入れておいてください。」と言われ、A君を呼んで丁寧に注意をしました。その後で、「指導しておきました。」と報告すると、「指導は入ったかい?」と尋ねられ、「はい。大丈夫だと思います。」と答えました。すると生徒指導担当のベテラン先生は、怪訝な顔をしました。若い先生には、その表情の意味するところが分かりませんでした。
 ≪指導が「入る」とは?≫
 「指導が入る」というのは、教師が指導をした結果、児童生徒が十分な反省をし、教師にとって望ましい行動変容がみられることを含意する言葉なのです。
 「指導が入った」とは、どういう状態を指すのでしょうか。
 指導する目的は、児童生徒を本人や周りが困っている状態から、本人も周囲も望ましいと考える方向へと導くことです。その際、教師からの強い指導(威嚇的な叱責等)によって、児童生徒が怯えやその場しのぎのために、一時的に行動を改善させた(見えるようにした)場合には、「指導が入った」とは言いません。指導とは、児童生徒自身の気づきを促し、自ら適切に判断し、行動する力を育むことだと考えられているからです。したがって、児童生徒が指導内容をしっかりと理解し受け入れ、自ら反省し行動を改め場合に、はじめて、「指導が入った」と言うのです。
 ≪「指導が入る」ためには≫
 問題行動を起こした児童生徒が、納得・反省という意味で指導を受け入れることが「指導が入る」ことです。
 「指導が入る」ことをイメージでたとえると、受け入れる側の児童生徒が自身の心のコップを上に向けることです。そのコップに指導によって水(説諭)が注がれ、水が溜まっていくことで自分の心の中で反省することが可能になります。心のコップが下を向いたままで指導すると、水ははじかれ周りに飛び散ります。これではいくら丁寧に話をしても指導は入りません。叱る指導を受け入れられるかどうかは、教師と児童生徒との信頼関係によるところが大きいのです。
 学校だけで通用する言葉ですが、奥が深いです。きちんと理解して使うことです。

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