子どもの生活環境の崩壊
高橋 英児(山梨大学准教授)
◇子どもの生活環境の崩壊の何を問題とすべきか
子どもたちのさまざまな問題行動(凶悪事件、荒れや暴力行為、いじめ、不登校など)が問題になるたびに、その背景や要因とは何かがこれまで議論されてきました。その際、個々の子どもの心の問題や生活環境、特に家庭の在り方(基本的生活習慣・生活リズムの乱れ、しつけの不足など)の問題が指摘されてきました。しかし、個々の子どもの心の問題や家庭の在り方だけに原因を求めるのであれば、問題の本質を見誤ることになります。
子どもを取り巻く環境が大変な状況にあっても、教師は問題行動に対して毅然と指導すべきだとか、各家庭がしっかりと子どもの面倒を見てしつけをするべきだと要求し、そのような観点からの取組を行っても、問題の本質的な解決に結び付かないことは明らかです。解決のためには複合的な対策が不可欠なのです。
◇問題行動を起こす子どもに学校は何ができるか
生活環境の崩壊が子どもの生きづらさを生み、問題行動へと駆り立てています。これらの克服のためには、崩壊した生活環境を、彼らが安心して生きられるものへと構築し直す取組が必要ですが、そう簡単なものではありません。
崩壊した生活環境の中で生きている彼らの生活現実から出発し、その生活現実と格闘している子どもたちと共闘していくことが何より求められます。
例として、子どもたちの願いや希望・期待を引き出し、それらを自治的な活動(学校・学級を楽しくするための取組など)を通して実現させていくことです。
この取組では、子どもと教師とが生活現実を問い、共有する中で、それぞれの苦悩が聞き取れる関係を生み出すことが肝要です。そして、この関係を支えにしながら、それぞれが自己の生き方に関わる願いや要求を自覚し、生活現実を共同でつくりかえる努力をしなければならないのです。
このような取組は時間がかかり、すぐには問題の解決には結び付かないように見えます。しかし、こうした足下からの地道な取組こそが、子どもたちに「生きる力」を育み、生活環境の崩壊の諸問題に対する有効な対策となるのです。
子どもと大人がともに安心して生きられる場を学級・学校から創造していくことが今重要なのです。(牧野要約)
👀 現場が抱えている問題は深刻ですが、大学の偉い先生が言うとおりにできれば苦労しません。個々の子どもや家庭の問題に対して、「それは家庭の問題だ!」と逃げてはいけないということです。
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