そこで強調されるのが、「やりがい」です。「何かのためになること」「自分が役立てること」が示されると、日本人は納得して仕事に打ち込むことができる。
学校でも子どもたちに「お金を稼ぐこと」を正面から教えることはありません。その代わりに教えるのは、使命感を持つことの大事さであり、自分が成長することの尊さです。そのため今の若い人たちは、強い「成長志向」を持っています。
「成長志向」が何に結びついているかというと、若者の離職・転職の多さです。「今の仕事では成長できない。」と感じると、すぐに辞めてしまう。あるいは「自分が成長できる仕事は何か」にこだわるあまり、職に就くこと自体のハードルが上がってしまうのです。仕事が「お金のため」と割り切れれば、就職活動もだいぶ楽になります。
≪なぜ、日本人はお金にこだわらないように見せるのか?≫
日本人は昔からお金よりも名誉を重んじていましたが、人の目も気にします。「みっともないことをしてはいけない」と自己規制しているのです。
≪「間柄の文化」と「自己中心的の文化」≫
欧米文化は、「自己中心の文化」です。自分がどれだけ大きくなれるか、強くなれるか、儲かるか、自分ために生きています。日本人は、小さいときから「人のため」ということを意識しています。「人間」という通り、人と人の間に生きる。これを「間柄の文化」と呼んでいます。
「自己中心の文化」は、思ったことを言えばいいし、したいことをすればいい、人の影響を受けるのは自分が未熟だから、という考えです。「間柄の文化」は反対に、常に人に配慮しなければなりません。相手の立場や気持ちに配慮できないことが未熟とされます。
この「間柄の文化」は日本の長時間労働にも影響を及ぼしています。目の前の子どもが何か課題を抱えているとき、「勤務時間が過ぎました。私の給料はこの時間までなので帰ります。」とは、日本の教師はなかなか言えません。相手の立場や配慮することが優先され、自分の役割を限定できないのです。欧米では、教師も勤務時間がきっちり決まっていて、それ以外の時間に子どもの相手はしません。
*日本人がにわかに欧米諸国のような「自己中心的の文化」を受け入れることはないでしょう。
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