2023年12月12日火曜日

花だより 慇懃無礼(いんぎんぶれい) フユサンゴ

 

 ~指導言葉を磨く~ 「痛み入る」
 この歳になっても未だ日本語を正しく使えない。例えば、目上の人が直々に挨拶に来てくれたとき、出迎えや見送りをしてくれたとき、あるいは、丁寧なおもてなしをしてくれたときなど、自分に行きすぎた対応をしてもらうことがあります。そんなとき、どのような言葉で気持ちを伝えるか。
 つい恐縮して使ってしまうのが、「申し訳ない」や「すみません」という表現ですが、「いやいや、こんなにしていただいて、すみません」「お忙しいところ、申し訳ないです」と繰り返し言うと、謝罪の言葉とも受け取られるため、「本当は嫌だったのかな」などと、相手に気を遣わせてしまう場合もあります。
 こうしたときには、「ありがとうございます」「嬉しいです」「とても助かります」という感謝や喜びの気持ちを素直に伝えた方が、印象がよいでしょう。
 お礼だけでなく、恐縮している気持ちをどうしても伝えたい場合に便利なのが、「痛み入る」という言い回しだとつい最近知りました。
「わざわざお越しいただき、痛み入ります」
「こんなによくしていただいて、痛み入ります」
「身に余るお褒めの言葉、痛み入ります」のように使います。
 相手の過分な好意に対し、ありがたさと申し訳なさを「痛み」という言葉で表現するのです。また、「痛み入る」の類語に「かたじけない」があります。
 「ご親切、かたじけなく存じます」は、時代劇でよく耳にする言葉ですが、「身に染みてありがたい」、「もったいない」、「おそれ多い」という意味の表現です。
 ある程度年齢を重ねた人が、さらりと使えば知性を感じさせます。ただし、若い人が使うと慇懃無礼(いんぎんぶれい:表面上は丁寧だが、内心ではバカにしている)な印象を与えかねません。
 小学校の先生の話は「諄(くど)い」とよく言われます。子どもたちにわかりやすく伝えようとすると、簡易な言葉を選び、繰り返したり、念を押したり、時には上から目線で言うときがあります。それに慣れていると、今度は大人を相手にしたときに、適切な言葉が出て来ないものです。気を付けなければなりません。

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