2021年3月16日火曜日

花だより 東日本大震災から10年 式辞を読み返す ハルリンドウ

 

 東日本大震災から10年、記憶を風化させてはいけない。
  平成22年度 卒業式式辞(平成23年3月18日)を読み返す
 卒業式の1週間前に、東日本・太平洋沖地震が起きました。
千年に一度といわれる地震と津波は未曽有の大災害となりました。自然の猛威は、人類の知恵と想像力をはるかに超えていました。想定外の地震や津波は、英知を結集した原子力発電所の安全神話さえ崩壊させました。10mの防潮堤も耐震を強化した建物も、天変地異の脅威には、成す術がありませんでした。ニュースに耳を澄ますたびに、何百人単位で犠牲者が増えています。被災地では、被災者が力を合わせて懸命に生きています。全国から自衛隊や警察、消防の皆さん、そして、世界の国々からも救援隊が来て、救助活動をしています。そうした人たちの勇気と善意、使命感にすがる思いです。
 被災者は、肉親や家を失い、悲しみの中で避難生活を強いられています。「お母さん!どこにいるの?」と叫ぶ子どもの声に胸が締め付けられました。この惨状を目の当たりにするとき、私たちはささやかな不便さは喜んで引き受けなければなりません。日本に住む限り、誰もが被災者になり得るのです。
 日本は、戦後の焼け跡から奇跡的な復興を成し遂げ、平和な国を築きあげてきました。今回の震災は、それに匹敵する国難です。目の前の現実に学ばなければ、平穏な生活を断たれた人が浮かばれません。首相は、「日本人は、必ずやこの国難から立ち上がるはずです」と言いました。これまで以上に日本人の知恵と想像力と努力が必要です。
 完全に復興するには何十年もかかるでしょう。日本の将来の安全で安心な国づくりの担い手は、先生やお父さんやお母さん方ではなく、皆さん方です。そのことを肝に銘じてほしいのです。
 私たちはテレビを見ているだけで、何も手助けができないもどかしさを感じています。しかし、皆さんにできることは、被災者のことを思い、節電や節約など、できる限りのことをすることです。わがままな行動を自粛することです。我慢することです。そして、しっかり勉強して、人の痛みの分かる大人になることです。


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