2021年3月11日木曜日

花だより 新しい衣装をまとったキーワード キランソウ

 

 新しい衣装をまとったキーワード  国立教育政策研究所名誉所員 菱村 幸彦
 教育界では、ほぼ10年のサイクルで新しいキーワードが生まれる。時代に即して視点や観点に違いはあるが、まったく新機軸ということは少ない。多くは従来のテーマが新しい衣装をまとって登場するにすぎない。
 1987年改訂の学習指導要領で強調された「自ら考える力」は、89年改訂では「新しい学力観」という新しい衣装で登場し、今は「新しい時代に必要となる資質・能力」という衣の中に「思考力・判断力」として包み込まれている。
 古くからいわれている「知育・徳育・体育」は、96年の中央教育審議会答申で「生きる力」というニューファッションでデビューし、今も指導要領に引き継がれている。今回、中教審答申が掲げた「日本型学校教育」も「知・徳・体」のバリエーションと言える。
 最新のキーワードは「個別最適な学び」である。「主体的・対話的で深い学び」がスタートしたばかりなのに、また新しい指導法かという声もあるが、これは新しい指導法ではない。答申の解説にあるように「個別最適な学び」は「個に応じた指導」を学習者の視点から捉えてものである。
 「個に応じた指導」は、半世紀前からの課題である。71年の中教審答申(四六答申)で、学校教育の在り方として、画一教育を排し「個人の特性に応じた教育」の重要性が提言されている。
 四六答申を受けて、78年の高校指導要領で習熟度別指導が導入され、さらに89年告示の指導要領で、小中学校ともに「個に応じた指導」が明記された。
 個別最適な学び=子に応じた指導は、古くて新しい課題である。ただこれまでと違うのは「GIGAスクール構想」の実現で情報通信技術(ICT)が学びの有力なツールとなったことである。




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