教育効果はそう簡単には出ない
近年、国の政策を検討する際に「エビデンス(科学的根拠)」という言葉が多く用いられるようになった。国民から徴収した税金の使い道を説明する義務があるため、財務省から各省庁に対して、各事業の効果に対するエビデンスを示すことが求められる。
文科省関連予算において、高校授業料無償化などの直ちに可視化される政策がある。校長は、学校説明会などの折に「本校から〇〇大学に〇人合格した。」というふうに分かりやすいエビデンスを学校紹介の材料としてよく使用する。しかし、教育活動の多くは、新たな試みを実施しても、その効果が表れるまでには時間がかかる。
勉強を頑張り始めた生徒の点数が直後の定期テストですぐ上がることはない。そこで諦めてしまうと低学力のままで終わるが、頑張り続けると確実に上昇する。教育や学習には、その効果が表れるまでタイムラグが生じることは、教師なら誰もが経験上知っている。
財務行政においては、国民個人や企業への給付金などの効果が見えやすい政策に注視する傾向がある。それに比べて教育(文科省の予算)は、予算を注いでもその効果がすぐには見えるように表れないので、国政として手を着け難い政策なのである。
今後の財政政策には、小学校で実現した1クラス定員削減の中学校、高等学校への拡張や教員定数の増加などのエビデンスが明確になるまでに時間を要すると思われる。その効果が表れるまで待つ、時間的、精神的なゆとりが必要なのではないかと考える。
「内外教育」3月12日「教育活動のエビデンス」小栗 洋(全国高等学校長協会元会長)より牧野要約
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