2020年3月21日土曜日

花だより スクールロイヤー 蕗の薹

蕗の薹

 学校は、保護者からのクレームに対して、何とか穏便な解決を図ろうとする。最近は、理不尽なクレームが増え、保護者対応で苦慮している校長は多い。そんな現場の声にやっと救いの手が…。
 ~スクールロイヤー~ 
  「教育の空間」に「法的観点」での問題解決の考え方を
                  吉田総合法律事務所弁護士 吉 田 俊 介
 【スクールロイヤーとは】
 「法律の専門家(弁護士)として」「裁判になってからではなくトラブルが予測される段階からかかわり」「学校(長)や教育委員会では迷う事案について」「子どもの最善の利益の観点から」「法律に基づく対応の助言を行う」存在である、と定義できる。
 【学校のニーズ】
 従前「学校」「教員」は権威そのものであり、学校現場における「紛争」や「学校生活上のトラブル」などは「教育的指導」によって、大半が学校内で解決されてきた。
 しかし、昨今の社会情勢の変化、具体的には、保護者、児童生徒および住民等の意識変化により、学校内トラブルの解決には「教育的観点」のみならず「法的観点」が必須になってきた。たとえば「児童AとBのケンカで、Bがからかったことが原因だったため、教員がBを叱ったところ、Bの保護者が『何の証拠があって悪いと判断したのか説明せよ』と乗り込んできた」事案などである。
 教員はもとより「教育の専門家」であるが「法律の専門家」ではない。先の例のように、学校という「教育の空間」に「法的観点」での問題解決の考え方を持ち込まねば対処しきれない事態が増えてきている。
 現場で問題の対処にあたる先生方が最も敏感に感じていると思うが、このような時代変化に対応するため、「すぐに」「ちょっとした」相談ができるスクールロイヤーが求められている。
 【スクールロイヤーの実際】
 就任のきっかけは、自治体の学校設置者(教育委員会)の要請により、年間契約(月額定額制)で引き受けることになった。当該自治体内には、6つの小中学校がある。相談したい案件があると校長が「相談概要カード」に記入のうえ、直接弁護士事務所に電話連絡して、相談日を設定し、学校長が来所のうえ相談する。(1件1時間程度。一度で解決しない場合は継続相談)相談概要カードは、事前または事後に教育委員会にファックスする。というものである。
 2019年4月から約半年の間に、平均して月に1件を超える相談があり、事案としては、教員による不適切行為の処分の程度、保護者からの担任教員に対する不当要求に対する対処法、児童間事故について学校が法的責任を負う場面かどうかの判断、など多岐にわたる。担当区域内の学校からは、「いざというときにすぐ相談できるため、たいへん助かる」との声をいただいている。
 スクールロイヤー契約後、学校長等は少しでも迷った事案があれば、抱え込まずに積極的に相談利用するようにしてほしい。対応が後手に回るほうが解決が困難になることが多いからである。
 【スクールロイヤー制度の展望】
 文科省は、スクールロイヤーを全国に約300人配置する方針を示した。具体的には各都道府県の教育事務所に各1名、政令指定都市と本庁直轄自治体に各2~3名の弁護士を配置する。
 当職は、これが運用開始されてもなお、各学校設置者が独自に契約するスクールロイヤーのニーズはなくなることはないのではないかと考えている。



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