2020年3月26日木曜日

花だより 「志 未来創造」 チューリップ

「志 未来創造」 
 退職に思う「至誠而不動者未之有也」
 10月の全連小山口大会への参加をきっかけに見るようになった幕末の長州を舞台にしたNHK大河ドラマ「花燃ゆ」が、最低の視聴率で終了しました。その理由は、主人公である吉田松陰の妹の美和と再婚相手の揖取素彦(初代群馬県令)が有名な歴史上の人物ではなかったからだと言います。しかし、共感するところが多くありました。美和は生涯にわたり、女子教育の普及に努めた人物です。「新しい日本をつくるためにも、学ぶことは、とても大切なことです。学ぶことで、考えることができるからです。」という言葉が心に残っています。 表題にある語は、その吉田松陰が揖取素彦におくったものです。
~自ら至誠の限りを尽くして計画し、あるいは実行したにもかかわらず、いずれも失敗に終わったことを振り返ってきたとき、どうしてもこの「未だよくこの一語を解するに能わず」と思わざるを得ない。孟子の語に偽りがあるのか、それとも自分の至誠の不足によるものなのかを考えずにいられない。(原文解説)~退職を間近に控え、我が教員人生を振り返るとき、満足感や達成感など全くありません。学力も体力も最低のままだからです。孟子の語に偽りなく、自分の至誠の不足だということは、十分理解しています。
 これを読んだ教頭が「低視聴率と学力低迷と掛けたのですか?」と聞いてきました。視聴率が低いから「花燃ゆ」は“つまらない駄作だったわけではない”と思いたいのです。我が教員人生を反省して、管内教育を担う後輩たちへメッセージを綴ります。
◇「花燃ゆ」から学ぶ “志を高く持ち、見聞を広める”
  山口県(長州藩)は、熱き志を胸に幕末の激動の時代を駆け抜けた吉田松陰に代表される維新の志士たちなど、数々の時代の転換期に歴史的な舞台や人物を輩出した地です。吉田松陰は、ペリーが再航したときに密航を企てましたが失敗しました。西洋の先進文明に心を打たれていたのです。わずか29年の生涯でしたが、その思想は、門下生の高杉晋作、伊藤博文や山縣有朋など維新の志士たちに受け継がれ、明治維新を成し遂げたのです。
 平成27年度の全国連合小学校長会研究協議会は、その山口県で10月に開催されました。校長になって、大阪、熊本、埼玉、そして今回の山口と4回の全国大会を経験し、そこでオホーツクとの違いを目の当たりにしました。また、中央研修(つくば)や筑波大附属小研究会などの参加は、教育に対する大きな転換となりましたが、もっと早くにこうした経験をしておけばよかったと悔やんでいます。
◇オホーツクに留まっていては、課題は見えないし、解決策も浮かばない。
 ある研究大会のレセプション(酒席)で隣席だった北大教育学部の教授(赴任してまだ2年目)に、酔いが回ったころ「北海道の学力が低い原因は何だとお考えですか?率直な意見をお聞かせください。」と問うたことがあります。すると「いい授業、質の高いものを見る機会が少ないですね。」と言われたのです。ショッキングな内容でしたが、中央から来た教育の専門家には、北海道の教育の現状、教員のレベルは、こう映ったのです。
秋田県校長会の提言で授業風景のVTRが流れました。周りにいた北海道の校長から「ほぉ~?」と驚きの声が上がりました。きちんと伸びた挙手、発表のときの姿勢や声の大きさ、音読の姿勢と本の持ち方、指導が行き届いていることが見て取れました。ところが秋田県の校長からは、「驚いたのはそこですか?当たり前のことなのに…。」と逆に驚かれたのです。
“ところ変われば”です。歴史や風土が違えば、その土地の味噌、醤油、地酒が生まれます。当然、教育観も異なります。比較することで北海道やオホーツクの課題が見えてくるのです。教員は、その職責を遂行するために絶えず研修に努めなければなりません。若いうちに見聞(研究と修養・本物を見る)を広めることです。

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