2020年3月20日金曜日

花だより 東日本大震災を忘れてはならない 菫

スミレ(菫)

 東日本大震災を忘れてはならない
 今年の3月11日は、コロナショックなため大々的な追悼式が自粛されました。しかし、大震災と原発事故がもたらした衝撃、復旧・復興に向けた現状と課題について、私たち日本人は、考えなければならない日です。 
 ちょっと古い新聞記事ですが、
 震災後間もなく一人のベトナム人記者が取材で被災地に入った。避難所で少年にインタビューする。少年は津波で両親を亡くし、はげしい寒さと飢えで震えていた。一つのおにぎりを家族で分けて食べるような状況だった。
 記者は見かねて少年に自分のジャンパーを着せかける。その時、ポケットから1本のバナナがぽろっとこぼれ落ちた。記者が、「バナナほしいか」と問うと、うなずくので手渡した。ところが少年はそれを食べるのではなく、避難所の片隅に設けられたみんなで共有の食料置き場に持って行き、もとの場所に戻ってきたという。
 記者はいたく感動する。帰国すると、〈こういう子どもはベトナムにはいない……〉と報道した。
 この記事が反響を呼ぶ。かつて、ドラマ「おしん」が大人気になったお国柄だ。ベトナムからの義援金は、1千万ドル(約8千万円)にのぼったが、このうち「バナナの少年にあげてください」という条件付きが5万ドルもあったというのだ。
 実はこの佳(か)話(わ)、谷内(やち)正太郎元外務次官が〈東日本大震災の最中、日本外交を考える〉と題して講演した中で紹介された。谷内はこの時、「少年は大変けなげな日本人の美質、DNAをきちんと受け継いでいる。将来の日本を支える若い人たちのなかに、こういう子どもは少なくない。上に立つ政治家も心のなかに美学を持ってほしい」と訴えている。
 この話を紹介した岩見隆夫氏(毎日新聞客員 編集委員)は、「悲劇と苦難のもとでも失われない民族的な強靱さを、一少年の小さな行為から教えられた思いだ」「今の日本は一見、いい材料がない。悲観主義が広がり、亡国論がはびこっている。この物語は大きな救いだ。あきらめることはない」と結んでいます。
 大震災の記憶を風化させないために悲惨な出来事を子どもたちに伝えることも大切だと思いますが、こうした心温まる話をたくさん子どもたちに語っていきたいと思います。
   

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