2018年10月19日金曜日

花だより オオケダテ 若松の翁


 健康は人生の目的ではないが、一番の条件である
  若松の翁(94才)の思い出 
 春になってフキノトウが芽を出す頃、「校長さん、ふきのとう採ってきたぞ!これを天ぷらにして喰ったらな、体の中の悪い物が全部出て、健康になって、わしみたいに長生きするぞ!」と90才を過ぎたヒゲを長く伸ばした若松の名物おじいさんが自転車に乗ってやって来ました。学校にもやってきて、教材園の草取りをしてくれたり、子どもたちと遊んでくれるので、子どもたちからは、“ヒゲじいちゃん”と呼ばれ、とても慕われていました。
 若松小の校長は、老人クラブの顧問と決まっていて月に一度、夫婦でクラブに顔を出し、おじいちゃんやおばあちゃんの話し相手をして、各自持ち寄った漬け物をつまみながら、昔話を聞くのが楽しみでした。
 「最近の若い者は、さっぱり顔を出さんな?」とヒゲじいちゃんが言う。「若い者とは?」と聞くと、70代の人のことでした。それもそのはず集まっている十数人は、みなさん85才以上の方なのです。みんな元気で矍鑠(かくしゃく)としています。名称は「若松クラブ」といい、「なぜ“老人”が入らないのか?」と尋ねると「年寄り扱いされるのがイヤだから!」と答えたのには驚きました。
 あるとき「歳もとって、だんだん出るのが億劫(おっくう)になってきたから、クラブに集まるのも週に二度から、一度にしては?」という意見が出ました。すると「だめだ!歳をとって先が短いからこそ、週に二度ではなく、三度でもいいんだ!家に一人でいたらすぐボケる。ここに集まってみんなで話をすることがボケ防止になっているんだ!」と言ったのも、ヒゲじいちゃんでした。そんなおじいちゃんの一番心に残っている言葉があります。
“健康で長生きすることが人生の目的ではない。健康でいられるから、好きなこと、やりたいことができる。まだ、いっぱいやりたいことがあるから、おれは健康で長生きするんだ”と、なるほど「深イイ話」です。そんなヒゲじいちゃんが、胃ガンで亡くなりました。高齢であることから、お使者さんは「手術はしない方がいい。」と言ったそうですが、本人の強い希望で手術をしたといいます。“ヒゲじいちゃんらしいなあ”と思いました。葬儀には800人集まりました。交友の広さ、人柄が偲ばれる葬儀でした。


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