2024年5月9日木曜日

花だより 手書き学習の効果は見直されつつある ナデシコ

 

   手書き文字文化
 文化庁が実施した「国語に関する世論調査」(h26)には、「文字を手書きする習慣は、これからの時代においても大切にすべきであるか」という設問に91.5%の人が「大切にすべきである」と回答しました。また、年賀状やあいさつ状などのついて、「手書きされたものや手書きが一言加えられたものがよい」と87.6%の人が回答しています。手書き文字の習慣や価値は、多くの人々に支持されているといえるでしょう。
 しかし、コロナ禍以降はデジタル化の波が押し寄せ、文字を手書きする機会は急速に減っています。文字を手で書くことの教育や文化は縮小し、失われてしまうのでしょうか?
 手書き学習の効果は見直されつつある
 文字を手で書くことの学習効果は、様々な方面から見直しされつつあります。むしろデジタル化が進んでいると思われている海外で、その研究は進んでいます。有名なモノのとして、ミューラー&オッペンハイマーの「ペンはキーボードより強し」という挑発的なタイトルの研究があります。ノートパソコンでメモしながら視聴する人と、紙にペンでメモしながら視聴する人に分けて、被験者に映像教材を学習させました。学習内容をテストすると、紙とペンでメモした人たちの成績が優位だったのです。
 また、最近の京都大学の研究グループは、漢字書字力と文章作成能力との関連性について明らかにしました。漢字の意味を理解すること自体よりも、漢字を手書きに習熟することの方が、文章作成能力に影響を与えるというのです。この研究は「手書きに基づく読み書き教育を今後続けていくことが、これからの世代の高度な言語能力の発達のために有益であること」を示唆しています。
 このように、特に記憶に関わる側面で、デジタル入力よりも手書きすることに学習効果があり、言葉を表現する力にも影響があることが確かめられています。教育現場では、その効果も意識しつつ、場合に応じたデジタルデバイスの使用を心がける必要があるでしょう。
                    鎌倉女子大学短期大学部 准教授 杉山勇人



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