9月のある朝、園の玄関前にあるプランターの花の世話をしていると、保護者が「園長先生、お花が好きなんですね。『らんまん』の牧野万太郎(牧野富太郎植物博士)と何か関係があるのですか?」と尋ねられました。「いや、残念ながら、ありません」と答えると、隣にいた3歳の女の子が、「園長先生は、なぜ、お花を取っているの?」と聞いてきました。「咲き終わったお花を取ってやると新しい花が、次々と咲いてくるんだよ」と教えてあげると、「どうして、いろいろなお花あるの?」、「どうして、色がみんなちがうの?」、「どうして?」が矢継ぎ早に飛んできました。これは大変だと思い、「先生やお友だちが待っているから、早く入りなさい」と言って、その場を逃げました。
NHK連続テレビ小説「らんまん」は9月で終了しました。主人公の牧野万太郎のモデルになった植物学者牧野富太郎のことは、小学生のとき、担任の先生から、「牧野君と同姓の偉人がいます。是非伝記を読みなさい」と言われて読んだ記憶があります。その内容はすっかり忘れていました。こうしてテレビで脚光を浴びることになって、誇らしく思う反面、烏滸がましくも思います。そこで改めて、牧野博士のことをネットで調べてみました。
「雑草という草はない」
当時20代だった山本周五郎がインタビューで「雑草」という言葉を口にしたところ、牧野博士はなじるような口調で次のようにたしなめた。
「きみ、世の中に〝雑草〟という草は無い。どんな草にだって、ちゃんと名前がついている。わたしは雑木林という言葉がキライだ。松、杉、楢、橡、柏、みんなそれぞれ固有名詞が付いている。それを世の多くの人が〝雑草〟だの〝雑木林〟だのと無神経な呼び方をする。もしきみが、〝雑兵〟と呼ばれたら、いい気がするか。人間にはそれぞれ固有の姓名がちゃんとあるはず。ひとを呼ぶ場合には、正しくフルネームできちんと呼んであげるのが礼儀というものじゃないかね」
SDGsの先駆け的な思想を当時から持ち合わせていたといえます。牧野博士の人となりがよく表れている逸話です。
私の務める訓子府町認定こども園わくわく園は、北見市の隣町にあります。7年前に開園した園舎は、2022年に「公共建築賞特別賞」を受賞した町自慢のこども園です。ですから視察者も多くいます。玄関先には、16個の大小様々なプランターに、ペチュニア、マリーゴールド、サルビアなどの花を植え、子どもたちや保護者、訪れる人を迎えています。その花の世話をするのが、毎朝の園長の仕事なのです。
わくわく園の園歌の3番の歌詞には、〝花ってすてきだね 色とりどりに咲きほこり 心の中にも 花が咲く ぼくたち わたしたち 訓子府に生きる 風の子 雪の子 大地の子〟とあります。子どもたちには、「花は美しい それがわかる心が美しい」という話をしています。花の季節は終わってしまいましたが、心に咲いた花は枯れることはありません。 「雑草という草はない」きれいに咲く花もいいけれど、道端に生える草にも気を留めなければならないと思います。
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